さてさて第3話となりました。
第4話までのテーマは共通して、ベビーモスリンの染色を通じた「災害時のコミュニティ・サポート」についてお話ししたいと思います。今回はコミュニティについて。
まず、災害と聞いても馴染みのない方も多いと思いますが、皆さんは「災害」というワードにどんな印象をお持ちでしょうか。国内では大きな地震や台風、豪雨のほか、猛暑や火山の噴火など、毎年のようにさまざまな災害が起き、災害大国と呼ばれるほどですね。
ベビーモスリンの染色を通じた事業を「災害時のコミュニティ・サポート」につなげたい思いがあります。それはなぜ必要なのかという点について、東日本大震災からの経験を振り返ってお話しを始めたいと思います。
僕は東日本大震災から災害支援活動を始めたのですが、それ以前は本当に恥ずかしい話ながら、災害(被災地)に対しての関心が低かったです。支援するor支援しない、の意識ではなく、単純に対岸の火事のように「ふーん、あの地方で地震あったんだねー、さて寝るか」くらいの意識。自分の身には起きないだろ、という以前に、想像さえもしたことがないレベルでした。そんな僕が突然、東日本大震災で身包みを剥がされます。生後7カ月の娘と妊娠中の奥さんと共に。一瞬で住家と職場を失います。前日まであったはずの生活基盤は社会ごと崩壊。悪夢ではなく現実だと理解するのに時間がかかりましたが、コレかなり精神的にキます。得体の知れないプレッシャーを受けながら、誰か助けてくれるかなあと想像するも、対岸の火事のように眺めているいつかの自分を遠隔地に想像し、さらに落胆したのを覚えています(活動を始めてからは応援してくれる優しい方に沢山出会うのですが)。そもそも失ったものが多すぎて、どこの誰にヘルプを出せばいいのかわかりません。でも、物質的なものは大概消えた一方で、何もない暮らしの毎日を見れば、何も持たない全員が一人を支え、何も持たないひとりが全員のために関わっています。そうしなければ毎日の暮らしが成立しないこともあるのですが、それ以上に大切なことがあるのだと気付かされました。まあその小さなコミュニティは地域に沢山在って、最初は暗く落胆していたのですが、徐々に徐々に小さな出来事でも楽しいことがあれば皆とシェアをして笑って過ごし始めました。本当に徐々に徐々に。苦しいながら毎日笑って生きる仲間や大勢の人を見ていてそんなことに気づいたんです。まあ大切なものは目に見えないというより、苦しい時こそ豊かな想像をすることが大切なのだなと教えられました。皆その見えなかった「人とのつながり」の中、毎日楽しそうにしているんですね。リアルに心を気遣いあって。こんなこと日常になかったです。優しいことこの上なしでした。当時、それらは「絆」って言葉で言われていました。
もし貴方に被災した経験がなければ、本当にちょっとだけでいいので想像して欲しいのですが、普段関わり合っている家族や会社や同僚やお客様、地域や地域住民やいつもの馴染みのお店など、空気のように当たり前に存在する全てが消えたとして、どんな気持ちになるでしょう。またどんな行動をするのでしょうか。被災した住家から避難所へ移り、職場が被災して仕事が止まり、道路が消えて篭城し、買い物したくても店が消えていて、そもそも財を失っていたりする中で知らない他者と場所と関わり合いながら凌ぐ状態です。想像できたでしょうか。僕は環境の変化が激しすぎて全く意味がわからなかったですが、家族や僕自身のことでさえ「ひとり」で何ともできない状態だと把握した時に、「人間ひとり」の無力さを痛感しました。でも生きるためには前に進まなければいけません。実際悩んで足踏みしていてもお腹が空くからそう思ったんです。皆もそう思っていました。そうなると、全員で動けば何とかなるんじゃないか?という気持ちになり、全員なら越えられる!という意識に変化していきました。 そう思わせてくれたのは多数の「ひとり ひとり」です。
面白いですよね。目に見えるところでは何も無いのに、何も無いところから元気になっていくんですから。僕はその経験以降、双方に支え合う「ひとり」をパートナー、支え合う「ひとりひとりの集合体」をコミュニティと定義しています。僕にとっては自団体「ピースジャム」がそれそのもので、本当に生かされた想いです。職場の仲間やママや子どもたち、そして共感者や支援者の皆さんの支え合いによって1コミュニティとして成り立ちました。
災害の後は誰もが孤独を感じますが、災害でなくとも辛い時は無理してまでひとりで頑張る必要はなくて、パートナーやコミュニティと共に少しずつやれば、少しずつ笑顔になっていくはずなんです。経験則から話しているつもりが予想以上にふわふわした表現となってしまい大変申し訳ない(笑)・・・のですが、かのブルースリーさんの名言「考えるな、感じろ」的に考えずに感じていただけたら幸いです。
今回は災害時の支え合いに不可欠だと思っている「コミュニティ」についてお話しいたしました。次回は「コミュニティ・サポート」のお話をさせて頂きたいと思います。
今回もお付き合い頂きありがとうございました。