ベビーモスリン物語~第9話~

子どもが書いた絵

今回の記事はですね、個人的に「ベビーモスリンで唯一悩んでいること」についてお話ししたいと思います。それはですね、ベビーモスリンに触れたことがない人に肌触りを説明する時に、「柔らかい」とか「優しい」とか「ふわふわサラサラしている」とか、確かな特徴ではあるけど「何に対してサラサラで優しくて柔らかいのか?」という疑問が自分自身に起きて、伝えきれない部分の痒みがある。触れてもらって実感していただくのはありがたいけど、その前に言葉でもイメージをしっかりと伝えたいのである。

色々考えた末、モスリンは昔から世界中で愛用されてきたのだから昔に遡ったら良い表現があるのでは?と天啓を得て、歴史を調べつつ先人に教えを乞うことにしました。安易ですね〜!
調べてみると色々と面白い。モスリンの起源である17世紀にインド亜大陸のダッカ(現バングラデシュ)等で産出される白く柔らかい平織の綿織物がヨーロッパにもたらされてから「ムスリン」や「モスリン」と呼ばれるようになったそうで、ヨーロッパの貴族を中心にモスリンが旺盛した17世紀。なんとあのマリーアントワネットがシュミーズ・ドレスとしてモスリンを愛用していて、18世紀になるとヨーロッパ中の女性がモスリンのドレスに身を包むようになったとか。

さらに驚いたのが、あの社会契約論でおなじみの、かのジャン=ジャック・ルソーが子ども服飾に適切な生地としてモスリンを推奨していたこと!

これはテンション上がりました。個人的に大好きな人なので余談を少々。この音楽家のようなヘアスタイルのルソーさんは実際に作曲家であり政治哲学者でもある当時の人気タレントだったのですが、教育についても革新的な人物で、17世紀初頭のヨーロッパでは「子どもを小さな大人」としてみていたため、大人の社会に子どもを合わせて生活させ、言う事を聞かなければ体罰と称して引っ叩くのが一般的だったそうですが、ルソーはこの「子どもを小さな大人」として見る社会通念を否定し「子どもは大人ではない。子どもは子どもである」とする立場を打ち出し、当時の子どもの人権を守ったり人権の基盤を生み出した傑物だったりするのです。また、子どもの自主性を重んじ、子どもの成長に即して子どもの能力を活用しながら教育をおこなうべきだと言っていて、子どもは年齢に応じた発達段階に合わせて、教訓や体罰によらず危険なことからは保護し有用な知識は読書ではなく自分の経験から学習させ教育していくべきだと考え、幼い子ども(5歳以下)に対しては情操面の発達を重んじ、児童期(5~12歳)には感覚や知覚で理解できる範囲を経験で教えていく、といった感じの生きる力を養う教育論を伝えまくっていたのですが、これってむしろ近代的。←ここまで余談。

という、この人物。彼がモスリンを推奨&普及活動したなら、当時の商業者や愛用者はどんな表現で説明していたのだろう?

17世紀〜19世紀にかけて世界中に普及していたこともあって、翻訳サイトのお世話になりながら雑学が増えていく中、18世紀のインドの貿易を調べていたら、コレだ!という表現が見つかった..!

インドの歴史曰く「風をまとう布」。

 

なにそれかっこいい。

「風をまとう」と声に出してみてもかっこいい。

某RPGの防具のような形容ではあるけれど、あの質感と肌触りを的確に表現しているという。特にダッカ・モスリンは薄いからこの形容はぴったりくる。

ベビーモスリンは「薄手で使いやすい」と愛用者には好評だけど、実はママと赤ちゃんへの最適性を考えた結果、これでも綿糸・生地を1.5倍ほど厚めにしているのです。

この「風をまとう布」という言葉。これ以上の形容が見つからないですね。

これからは説明するときは、あのマリーアントワネットが着用し、ルソーが広め、インドでは風をまとう布と評された生地で、サラサラふわふわです。と言える(笑)!

もうね、今回は僕のモヤモヤに付き合っていただいてありがとうございます。

日本では羊毛を使用したモスリンの歴史が深いため(毛を使っていたため毛斯綸(モスリン)と書かれる)綿モスリンを熱心に説明している人が見当たらず、おかげで勉強できてスッキリした次第でございます。

 

さてベビーモスリンの現場はというと、風にまとう布と呼ばれていたことを知らずに風にまとう布を縫製するママ達。「それ風をまとう布ですよ」と次回のミーティングで教えようと思います。

そうそう最後に、ピースジャム工房に親子で来てくれていた女の子が今度小学生になるということで、お別れの際にソワソワしながらお手紙付きで絵を渡してくれました。

子どもからもらった絵

なんと、立派な額付き!

子どもからもらった手紙

ウルッとくる。お手紙も本当嬉しい。

ん?よく見たら、数年間「けんさん(僕の名前)」と呼ばれていたと思っていたけど、そっかそっか。けーさんって呼んでいたんだね(笑)小学校行っても沢山の友達と元気に過ごしてね!けーさん嬉しいです。

出会いも別れもあるけど、縁を育む春に子どもの成長を通じて一喜一憂できる職場に本当感謝しています。

というわけで、今回は私事に振った内容となりましたが、最後までお読み頂きありがとうございました!

<ピースジャムとベビーモスリン>

2011年3月の東日本大震災直後から、ロンドン在住の日本人乳幼児ママたちによる東北支援として始まったベビーモスリンプロジェクト(旧・モスリンスクエアプロジェクト)。
被災地でのベビーモスリン配布にはじまった活動は、世界中で話題となった。
被災地では布の便利さも話題となり、ロンドン在住ママと気仙沼ママたちの手によって初の日本製モスリンスクエア「ベビーモスリン®」が誕生した。
現在では、ピースジャム工房にて気仙沼のママたちによる製作がされており、母親たちの雇用支援にも繋がっている。

詳しくはこちらをご覧ください。
http://www.babymuslin.org/

INFORMATION

YELL FOR 社会貢献団体

応援している社会貢献団体

TOPICS

BACK NUMBER

hivelocity

google