千葉県立流山南高等学校でおこなわれた 「盲導犬学校キャラバン」にいってきました。

サニエルと生徒たちの集合写真

盲導犬学校キャラバンとは

盲導犬学校キャラバンは、日本盲導犬協会が学校に訪問しておこなう盲導犬の実演講習のこと。「盲導犬ってどんな仕事をするの?」「視覚障害者って?」など、実際に目の前で学ぶことができます。今回は、千葉県立流山南高等学校でおこなわれた盲導犬学校キャラバンにおじゃまして、日本盲導犬協会 神奈川訓練センターの山本さんと盲導犬ユーザーの森さんにお話を伺ってきました。

山本さんと盲導犬

盲導犬だけでなく、視覚障害についてしっかり伝えられるように。

盲導犬学校キャラバンで講師を務めた日本盲導犬協会の山本さん(左)と盲導犬ユーザーの森さん(中央)

盲導犬学校キャラバンで講師を務めた日本盲導犬協会の山本さん(左)と盲導犬ユーザーの森さん(中央)

──盲導犬学校キャラバンの概要を教えてください。

<日本盲導犬協会 山本さん>

盲導犬学校キャラバンは、子どもたちが街なかで盲導犬ユーザーに出会ったときに、自然と声をかけて手助けできるようになることを目的におこなう実演講習のことです。基本的には、協会スタッフと盲導犬ユーザーが学校に訪問して、視覚障害の現状や盲導犬の活動についてデモンストレーションを交えた授業をおこないます。

学校へ訪問する活動自体はすでに20年以上継続しており、現在は神奈川訓練センターだけでも年間70~80校、全国では年間200校以上の学校で開催しています。訪問するのは小学校が大半ですが、中学校や高校でおこなうこともありますね。

 

──盲導犬学校キャラバンでは、どんなことを心がけていますか?

<山本さん>

私たちは「日本盲導犬協会」という名前なので、どうしても「盲導犬」にフォーカスされがちです。学校からも、「盲導犬と歩かせてください」「体験させてください」といったご要望をたくさんいただきます。ですが、盲導犬はあくまでも「視覚障害者が歩く手段の一つ」です。だから、盲導犬学校キャラバンも犬に対する興味だけで終わってしまわないよう、視覚障害についてしっかり伝えられるように心がけています。

盲導犬の歩行体験って、「白杖との歩き方の違いが分かる」とか、「徐々に慣れていって盲導犬を信頼できていくのが分かる」というように、大人でないと理解しにくい部分も多いんです。子どもたちがアイマスクをして盲導犬と歩いても、単に「怖かった」で終わってしまう。それだと、体験する意味も薄くなってしまいますからね。

子どもたちをうまく巻き込み、より年齢に合わせた授業を。

デモンストレーションで歩行する森さんと盲導犬のグリーナー(ラブラドールレトリバー 3歳)

デモンストレーションで歩行する森さんと盲導犬のグリーナー(ラブラドールレトリバー 3歳)

──盲導犬学校キャラバンの講師をするにあたり、気を付けていることは何ですか?

<山本さん>

最初の「つかみ」を大事にしています。できるだけ早い段階で、生徒たちが興味を示すポイントを掴んでおいて、それを糸口に話を展開するようにしています。一人の子が大きな反応をしてくれたら、その子の発言をうまく拾って全体を巻き込んでいくような。

あとはやはり、学年によって話す内容を変えることです。高校生なら社会の仕組みや法律の話もできますが、小学生は身近な話が中心になります。小学生でも、4年生と5年生では興味も理解度も違いますから、そのあたりは毎回気をつかっています。

 

──生徒たちからは、どんな質問が多いですか?

<山本さん>

「盲導犬は何歳ですか?」からはじまり、「もし、具合が悪くなったら盲導犬が助けてくれるんですか?」とか、「盲導犬はどうして洋服を着ているんですか?」とか様々です。質問内容は、学年によって全然違いますね。

<盲導犬ユーザー 森さん>

私の場合は、「どういうふうに生活してるんですか?」っていう質問が多いですね。あと、「目が見えなくなって嬉しかったことはありますか?」って聞かれたのは印象的でした。たしか小学校4年生の子でしたが、大人からは絶対に聞かれない質問ですよね(笑)。

その質問には、こう答えました──「目が見えなくなったのは嬉しいことじゃないよね。やっぱり不自由だし、みんなに助けてもらわなきゃいけないこともあるし。だけど、見えなくなったおかげで盲導犬が私のところに来てくれた。盲導犬と歩くようになったから、こうして学校に呼んでもらえた。だから、今日みんなと会えた。これって、すごく嬉しいことだよね」。

 

──今後の盲導犬学校キャラバンについて教えてください。

<山本さん>

小学校3年生以下だと、どうしても子どもたちが飽きやすい傾向にあります。なので、盲導犬学校キャラバンは「4年生以上をおすすめします」と案内しているのですが、それよりも下の学年向けに開催したいというご要望もいただきます。

ですから今後は、内容や時間の使い方を工夫して、より年齢に合わせた授業を考えていきたいと思っています。せっかくやるなら、「学校に盲導犬が来た!」だけでなく、子どもたちに何かしら持ち帰ってもらいたいですからね。

子どもの頃からの教育によって、視覚障害者への差別意識をなくしたい。

もし、街なかで盲導犬ユーザーに出会ったら? 代表の生徒さんによる誘導体験

もし、街なかで盲導犬ユーザーに出会ったら? 代表の生徒さんによる誘導体験

──盲導犬学校キャラバンを検討している学校関係者へメッセージをお願いします。

<森さん>

最近は、スマホの普及やアプリの進化で、視覚障害者の生活はとても便利なものになりました。でも、相変わらずだと感じるのは、周りの人たち、特に大人の反応です。まだまだ日本人は障害者に対して「かわいそう」「お気の毒」っていうイメージを持っている方が多いと思います。

視覚障害に限らず、聴覚障害や車椅子の方も同じだと思いますが、やっぱり「かわいそうな人」とは思われたくないですよね。だから、私が学校で話すときは必ず、「見えないのは不自由だけど、かわいそうな人じゃないんだよ」って伝えています。障害者に対する差別や偏見をなくすという意味でも、盲導犬学校キャラバンで子どもたちと触れ合う意義は大きいと思います。

<山本さん>

最近は、教科書などでも盲導犬のことが取り上げられるようになりましたが、正しくない情報があったり、盲導犬に対する考え方なども団体によって様々です。

子どもたちが間違った先入観を持っていると、私たちが講習をしても上書きするのが難しかったりします。なので、先生方も不確かなことがあったら無理に答えを示す必要はないと思います。「盲導犬とどう接するべきか?」とか、「視覚障害者に出会ったらどうするべきか?」といったことを、子どもたちと一緒に考えたり、調べたりしていただけると嬉しいですね。

もちろん、盲導犬学校キャラバンで私たちを呼んでいただければ正しい情報をお伝えできますし、協会のホームページにもいろんな情報を掲載しています。YouTube動画も配信していますので、ぜひ授業に取り入れていただき、盲導犬や視覚障害に関する理解を深めていただければと思います。

>> 日本盲導犬協会 公式ホームページ
https://www.moudouken.net/

>> 日本盲導犬協会 公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCgMFOlFDeKasiqlEttT4f9g

盲導犬学校キャラバン レポート

校舎

千葉県立流山南高等学校で盲導犬学校キャラバンを開催

今回は、千葉県立流山南高等学校でおこなわれた盲導犬学校キャラバンにおじゃましました。受講したのは、1年生・2年生の各8クラス、約600名の生徒さん。講習内容をピックアップしてレポートします。

 ──視覚障害者の見え方は一人ひとり違う!?

視覚障害者とは、目が見えない人・見えにくい人のことを言います。盲導犬と歩いている人は「まったく見えていない」と思っている生徒が多かったようで、少しは見えている人がいるということに驚きの声も聞かれました。

<森さん>

私は右目が全然見えませんが、左目は、近づけば何かモノがあるのは分かります。まったく見えない人(全盲)と、見えにくい人(弱視)のちょうど中間くらいだと思います。

<山本さん>

盲導犬ユーザーの方も、スマホを使っていたり、本を読んでいたりすることがあります。ひと口に「視覚障害者」と言っても、同じ見え方の人は一人もいませんので、ひと括りにすることはできません。盲導犬を連れていても、少し見えている人もいるということは頭に入れておいてくださいね。

 

──盲導犬は信号の色が分からない!?

盲導犬には、「段差を教える」「障害物をよける」「曲がり角を教える」という3つの仕事があります。逆に言うと、それ以外のことは原則としてできません。盲導犬と一緒に信号を渡っている人を見かけたことがある生徒もいましたが、実は盲導犬が信号の色を教えているわけではないのです。

<山本さん>

勘違いされがちですが、盲導犬は信号の見分けはできません。盲導犬ユーザーが車の音や人の足音を聞いて信号の色を判断しているのです。ですが、状況によっては危険な思いをすることもありますので、「盲導犬と一緒にいるから大丈夫」と思わず、信号待ちしている盲導犬ユーザーを見かけたら声をかけて渡れるか渡れないかを教えてあげましょう。もちろん、白杖を使って歩いている人も同じです。

 

──盲導犬は家事を手伝わない!?

身体障害者補助犬の一種である介助犬は家のなかで日常生活をサポートすることも仕事ですが、盲導犬は家のなかでは仕事をしません。では、盲導犬ユーザーの森さんは、家でどのように暮らしているのでしょうか?

<森さん>

料理も掃除も洗濯も、全部私がしています。最近は便利な道具や家電がたくさんあるので、「視覚障害者だからできない」ってことはあまりないんです。駅や横断歩道など、街なかでは声をかけていただけると嬉しいですが、家のなかでは視覚以外の感覚を使ってうまく生活しています。

<山本さん>

「視覚障害者はできないことが多い。だから周りが手伝わなければいけない」という見方がありますが、それは違います。みなさんも、できないことや苦手なことはありますよね? できないことがあれば、誰でも他のことで補ったり誰かに手伝ってもらったりします。視覚障害者もそれと一緒。困っていることがみなさんとは違ったり、少しだけ多かったりするだけなんです。

「視覚障害者だから助けてあげなきゃ」ではなく、「困っているならお互いに助け合う」──これが、いちばん大事なことだと思います。街なかで盲導犬と歩いている人に出会ったら、「もしかしたら困っているかもしれない」と、ちょっとだけ気にしてみる。それだけで、もっとみんなが暮らしやすい世の中になっていくはずです。

 

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ホームページ:https://www.moudouken.net/

電話番号:
(東京事務所)03-5452-1266
(神奈川訓練センター)045-590-1595

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