盲導犬育成と歩行訓練をはじめとするリハビリテーションで、 東北の視覚障害者を支える!

訓練犬とスタッフとサニエルの集合写真

仙台訓練センターとは

仙台訓練センター(スマイルワン仙台)は、東北地方で唯一の盲導犬育成施設。盲導犬の育成だけでなく、視覚障害リハビリテーションにも力を入れ、目の見えない人・見えにくい人の生活の質(QOL)向上のため、東北6県に新潟県を加えたエリアで活動しています。今回はぼくサニエルが、日本盲導犬協会 仙台訓練センターの奥澤さんにお話を伺ってきました。

設立以来、視覚障害者向けのリハビリテーションに注力。

奥澤さんの画像
日本盲導犬協会 仙台訓練センター 普及推進部でリーダーを務める奥澤さん。

仙台訓練センターの概要を教えてください。

仙台訓練センターは、日本盲導犬協会の1拠点として2001年5月にできた盲導犬訓練施設です。東北全域と新潟で暮らす視覚障害者を対象に、盲導犬を提供し歩行支援をおこなっています。その他にも視覚障害リハビリテーションを通じて、見えない方、見えにくい方のQOL向上のためのサポートをしています。

設立の背景としては、東北地方に視覚障害者向けのリハビリテーションを提供する施設がなかったことがあります。首都圏であればそのような施設はありますが、東北にはありませんでした。そこで、東北エリアにおける視覚障害リハビリテーションの拠点となるべく設立されたのが仙台訓練センターです。

視覚障害リハビリテーションでは、具体的にどんなことをするのですか?

「白杖歩行訓練士」や「盲導犬訓練士・歩行指導員」の資格を持つ専門スタッフが、見えない方、見えにくい方が生活をするうえで困っていることについて話を聞き、その方が必要としていることに対して、技術面での訓練や、道具・ツールの紹介などをおこないます。

具体的には、盲導犬や白杖を使った歩行訓練の他、調理・掃除・洗濯などの家事全般、お仕事のためのWord・Excelの使い方から、メールやインターネットの使い方まで、訓練内容は多岐にわたります。

最近の傾向としては、スマートフォンやタブレット端末の使い方を訓練するケースが増えていることでしょうか。音声読み上げのアプリなどが進化していることもあり、視覚障害者もそれらを活用することで、情報を得たり物を買ったり便利なことが増えているそうです。

なお、対象は成人の方だけではありません。夏休みには小学生向けのサマーキャンプや、中学生向けの短期リハビリテーションなどを開催しています。たとえば、小学生向けサマーキャンプでは、水遊びをしたり、調理をしたり、スポーツをしたり、様々な経験や挑戦を楽しめるような企画をしています。

一人ひとりのライフスタイルに合わせた方法・内容で、視覚障害者の自立と社会参加を支援できるよう心がけています。

相談や訓練を通して、社会参加のきっかけになるように。

視覚障害リハビリテーションの様子
視覚障害リハビリテーションは、盲導犬や白杖を使った歩行訓練が中心になる。

視覚障害リハビリテーションの利用者からはどのような声がありますか?

「見えなくてもできるんですね」という声は多く聞きます。ある方は、「目が見えなくなって、当たり前にできていたことが何もできなくなってしまったけれど、一つひとつ学んでいくことで、また生活の範囲が広がった」と話していました。

私たちとの相談や訓練を通して、視覚障害者が「できる」ことを感じて、「ここまでできるのなら、これもやってみよう」というように次の目標につながっていく──「視覚障害リハビリテーションがその方らしい暮らしや社会参加のきっかけになれるように」と思ってスタッフ一同、取り組んでいます。

その他には、どんな活動・イベントをおこなっていますか?

視覚障害と盲導犬についての啓発活動を、年間で380回ほどおこなっています。東北地方ではこれまでに盲導犬を見たことがない方も多く、まだ盲導犬が疎遠な存在なのではないかと思います。そこで、小中学校へ訪問する「学校キャラバン」や募金活動などのイベントは、できるだけ多くの方に盲導犬の存在をご理解いただくために、東北・新潟の各地域の盲導犬ユーザーも参加する形で開催しています。

啓発活動のなかでも注力しているのは、飲食店・商業施設・交通機関・医療機関など事業者向けの「盲導犬受け入れセミナー」です。盲導犬などの身体障害者補助犬は、不特定多数の方が利用する場所はどこへでも同伴することができますが、法律が認知されていないために同伴を断られてしまうケースが後を絶ちません。また、責任者の方が盲導犬の受け入れについて理解されている場合でも、「来店された時にどのように接客すべきか分からない・・・」という声を耳にすることもあります。

事業者が安心して盲導犬を受け入れられるように、そして、スムーズに視覚障害者にサービスを提供できるように、正しい情報を浸透させていくことも私たちの大切な役割だと考えています。

盲導犬や視覚障害について正しい知識を広めていきたい。

サニエルと盲導犬2頭
訓練犬たちはサニエルを見ても冷静!?

視覚障害者をとりまく課題を教えてください。

視覚障害者に情報が届きにくい点は、大きな課題だと思います。たとえば、盲導犬についても、無償貸与していることや、保有視覚のある方(見えにくい方)にも貸与できることなど、正しい認識が広まっているとは言えないのが現状です。さらに言えば、視覚障害者向けの制度や、視覚障害者リハビリテーションなど、生活に直結する情報でさえ知る機会がなかった方にも多く出会います。

私たちは、東北・新潟の隅々にまで正しい情報を広めることで、一人ひとりの視覚障害者が自分らしく選択できる環境づくりの一端を担いたいと思っています。

東日本大震災のときの視覚障害者災害支援について教えてください。

震災のときは、職員の他に訓練犬が17頭と、宿泊して盲導犬の共同訓練中の方が3名いましたが、みな無事でした。被災地域の盲導犬ユーザーやボランティアとも数日かけて全員と連絡を取ることができ、無事を確認できました。

震災の数日後には当事者団体を中心に「視覚障害者支援対策本部」が立ち上がり、仙台訓練センターは宮城県支部として、被害が大きかった沿岸部の避難所へ白杖や携帯ラジオなどの支援物資を手に訪問しました。当時、避難所では情報が錯綜しており、視覚障害者の所在がほとんど分からずに苦労したことを覚えています。

会うことができた視覚障害者からは、「情報の大半が張り紙で掲示されるから情報を得ることができない」など、避難所生活での不安の声が聞かれました。そのときあらためて、障害の有無にかかわらず誰にでも情報が届くような工夫や周囲の配慮の必要性を感じました。

輪ゴム1本がコロッケで、輪ゴム2本がメンチカツのサイン。

奥澤さんの画像
「視覚障害者は少しの配慮があるだけですごく助かります」と言う奥澤さん。

視覚障害をお持ちの方へメッセージをお願いします。

私たちは、東北・新潟での視覚障害リハビリテーション、特に歩行訓練に関しては専門知識と技術があります。歩行訓練はもちろん、見え方の変化に伴うお悩み、その他視覚障害リハビリテーションに関することは仙台訓練センターにお気軽にご相談ください。私たちは、きっとみなさんの力になれるはずです。

東北の方々へメッセージをお願いします。

仙台訓練センターの事業は、ボランティアの協力がなければ成り立ちません。今、特に募集しているのは盲導犬候補の子犬を育てていただく「パピーウォーカー」です。パピーウォーカーの存在が、候補犬の育成、盲導犬の育成につながり、視覚障害者の社会参加へとつながっていきます。みなさまのご協力をお願いいたします。

>> パピーウォーカー大募集!
https://www.moudouken.net/volunteer/puppywalker-recruit.php

また、盲導犬の同伴について「身体障害者補助犬法」や「障害者差別解消法」などの法整備はされていますが、まだ入店を断られることが多くあります。

>>盲導犬受入れ拒否対応事例集
https://www.moudouken.net/special/case-study/

盲導犬ユーザーが安心して施設・店舗を利用ができるよう、みなさまのご理解をお願いいたします。盲導犬を受け入れるために、新たにご用意いただく物や設備はありません。必要な物は盲導犬ユーザーが持参しますので、周囲の状況について情報提供をしていただき、あたたかく見守ってください。飲食店であれば、たとえばメニューを読む、トレーを運ぶなど、少しの配慮で視覚障害者は利用しやすくなります。

ある盲導犬ユーザーから、嬉しかった出来事を聞きました。スーパーのお惣菜売り場で揚げ物をいくつか買ったとき、店員さんが「輪ゴムが1本かかっているのがコロッケで、輪ゴムが2本かかっているのがメンチカツです」と教えてくれたそうです。

「見えないと分かりにくいかな?」という少しの想像と少しの工夫が役立ちます。コロッケの輪ゴムのような配慮を誰もが当たり前にできる社会になるよう、ご協力をよろしくお願いいたします。

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ご支援、その他のお問合わせはこちらで受付けております

日本盲導犬協会バナー

公益財団法人 日本盲導犬協会 仙台訓練センター
https://www.moudouken.net/center/sendai/
電話番号:022-226-3910
住所:〒982-0263 宮城県仙台市青葉区茂庭字松倉12-2
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