ママのチャレンジを応援!エシカル購買が広げる支援の輪

ピースジャムの公園にいる子どもの写真

NPO法人ピースジャムとは

2011年の東日本大震災を機に誕生した赤ちゃんとお母さんを支援する団体。宮城県気仙沼市を拠点に子育て・雇用支援を行っている。地域で安心して子育てができるコミュニティづくりを目指し、子育てと仕事を両立できる仕事場の提供と、これによる雇用の創出、お母さん同士の交流の場の提供、子どもが安心して遊べる環境づくりに取り組んでいる。

ピースジャム代表 佐藤賢さんの写真

ピースジャムの活動について教えてください。

ピースジャムは気仙沼市の落合地区という山間部に子連れで働ける工房(職場)を設けて活動しているNPO法人です。東日本大震災を契機に、仕事と育児を支え合える職場と、支え続けられるコミュニティを作る必要性を強く感じ活動を開始しました。職場では、ママが自社の縫製品「ベビーモスリン」の制作をしつつ、傍では子育てをしながら1日を過ごしています。一方、ベビーモスリンの収益をもとに新たな雇用につなげたり、子育てイベントを開催したりし地域コミュニティの輪を広げていく活動を行なっています。工房の外には小さな子ども用の広場や、大きなケヤキのツリーハウスもあり、地域住民の憩いの場や遊び場として使っていただきたいので終日一般開放しています。こちらのメンテナンス費用もベビーモスリンの収益から支払われていますので、生産者も購入者もサービスの受益者も子育ての当事者によって循環しているのがピースジャムのユニークな点です。


ベビーモスリンについてもう少し詳しく教えてください。

ベビーモスリンはモスリンスクエアの自社ブランド名です。このベビーモスリンは生まれたての赤ちゃんから未就学児童に特化してお使いいただける100%コットンの「国産子育て万能布」として制作しています。生地の通気性と速乾性が高いことが特徴で、沐浴のコットンや、おくるみや手口拭き、バスタオルやハンドタオル、授乳溢れ拭きやベビーカーの日除けなど、さまざまな用途に使える魔法の万能布です。使うほどにシワが増え、サラフワ感が増していくのも特徴の一つです。モスリンスクエアは英国が発祥の地ですが現在は世界中の子育て層に愛用されているアイテムです。


東日本大震災当時と比べてベビーモスリンの活動に変化はありましたか?

大きく2つあります。10年前よりもエシカルな購買が世間で醸成されてきたことと、ママたち制作者の意識の変化によって活動の内容が変わりました。

2011年当時から2014年頃にかけて全国、全世界から被災地を応援する意識の高まりは凄まじく、私たちのベビーモスリンも現在の15倍は好調に生産し販売してこられました。ですが、あとは風化と共に自然に減少していきました。これは実際の実力に伴った実数に移行したということです。当時は催事やプロジェクトが減ることに比例して売上も減少していきましたが、それだけ応援していただけていたことでもありますので、改めて応援に感謝していました。とは言いつつも、ベビーモスリンの収益が活動へ与える影響はダイレクトですので、売れれば活動を維持し向上もできるのですが、売れなければ活動は縮小、そして停止という分かりやすさ。そのため縫製方法や品質や価格を改善しながら細々と活動してきました。そんな折、昨今では、エシカル消費にともなう取引が増えてきました。


エシカル消費とはなんですか?

「エシカル」とは、「倫理的な」「道徳的な」という意味の英語の形容詞であるethical を、そのままカタカナにした言葉です。これに消費を加えると「道徳的な消費」となり、「思いやり消費」や「応援消費」とも呼ばれているそうです。これは「安くて良いモノ」を基準に選ぶことではなく、より広い視野で、「人や社会、地域、環境などに優しいモノ」を購入する消費行動を指します。制作側の労働環境や活動内容への共感・応援も含まれ、身近なところでは、よく聞く「フェアトレード」がこれにあたります。世界中の至る所で社会問題や環境問題は深刻な状況ですが、課題先進国である日本も例に漏れず、貧困、飢餓、健康・福祉、教育、ジェンダーといった問題や、女性の活躍や、性別にとらわれず自己実現しやすい社会作りも大きな課題になっています。生活者がそれらの諸問題に関心を向けて「課題解決につながりのある商品」の購買(消費)をすることで、課題解決の当事者としても参加でき、併せて社会や環境が改善されていくという「三方良し」な考え方が「エシカル消費」です。アパレルではエシカル商品の制作へ国際基準も生まれたり、SDGsが後押ししたりと、世界中で注目が集まっている分野です。このエシカル消費に積極的な販売店が増えてきたおかげで、私たちピースジャムがずっと制作してきたベビーモスリンの販売が徐々に(本当に徐々にすが)売れはじめました。企業内マルシェやCSR(企業の社会的責任)部門への販売、ふるさと納税やフェアトレード商品専門店との取引が特に増えています。先に述べたことに加え、このコロナ渦で自宅の時間が増えたことで、生活者が自身のライフスタイルを見つめなおしたり、社会へ関心を向ける良い機会に繋がっているのも消費への関連性があるのかもしれません。いずれにせよ、たくさんの仲間とともに支援活動をしているのと同様の気持ちで本当にありがたい限りです。


働いているママたちに変化はありましたか?

エシカルへの関心が高まったのは世間だけではなく、職場のママたちも同様だったということ。先述の取引先が徐々に増え始めたらママスタッフより「ママが制作しママに届ける商品なのだから、作り手のライフスタイルや価値観も商品に込めて送った方が何かと感度が一致するので、多様なママへ発信するためにもカラーバリエーションを増やしてベビーモスリンの世界観を彩りたい」といった声が職場で上がりました。以前は3色増やすのに2年掛けた経験がありますが、実現可能かどうかはさておきクリエイティビティへの意欲が職場で高まるのは大変喜ばしいことです。ママたち主導でどの色が良いか厳選に吟味した結果、新たに増やすその数なんと20色。いや、彩りすぎでしょ」と言いたいところをグッと抑え、色見本とサンプル制作に取り掛かり3ヶ月が経った頃、6色がボツとなり14色のベビーモスリンが誕生しました。

通常3ヶ月でこんなに商品を開発することってないと思いますが、それを可能にしたスタッフ全員の努力と集中と情熱は手前味噌ながら素晴らしかったです。
コンセプトは、「自然を基調としたママのアイデンティティ」。1枚ごとに丹念に手染めを施しています。こちらはベビーモスリンカラーズとして自社ECでも販売を開始しました。
以前より販売しているベビーモスリンカラーズの3色は、現在もプロの染色家の手によって染色加工していますが、新商品14色は染色経験1年目のスタッフが生み出した品です。寝る間を惜しんで努力した結果、プロお墨付きの高品質な染色ができるようになりました。
これによって、自社工房で生地の裁断からパッケージングまで責任を持って製作できるようになりました。


最後に、記事をご覧になった読者へメッセージをお願いします。

今回は有色のベビーモスリンをご紹介いたしましたが、ベビーモスリンを初めてお知りになった方には、ベースとなる白無地のベビーモスリンをお勧めいたします。リーズナブルですし、毎日の生活色に馴染みやすくギフトにも一番利用されているからです。赤ちゃんだけではなく大人のファンも増えていますので、肌が敏感な方ほど体感していただけたら嬉しいです。また、ベビーモスリンはこの通り、お客さまの声や赤ちゃんの使用感、制作者の意向を取り入れ、改善を繰り返しながら進化してきた商品ですので、この先もたくさんのご意見を頂けたら今後の励みになります。この記事をご縁にどうぞよろしくお願い申し上げます。

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