最近の気仙沼の子育て環境に変化はありましたか?
大きな変化が生まれ始めました。
以前の記事でもお話しさせていただきましたが、ここ数年、子育て期の親や子どもがより良い環境で暮らせるよう、ピースジャムはもちろん、地域のNPO法人や行政、企業なども地域内での連携を強めていて、地域に点在する組織や個人が発していたパッションが「地域全体」という面への広がりをみせ、最近は面白いトピックが生みだされています。
なかでも、令和5年1月に気仙沼市が発表した人口減少対策に向けた「3つの0(ゼロ)」による子育て負担の軽減の発表はインパクトがありました。
気仙沼市のふるさと納税の収益が拡大しているため、ここから予算を組んで令和5年度から今後10年間で50億円を人口減少対策の強化に使うという発表です。そのなかの主な事業の1つである「3つの0(ゼロ)」は気仙沼では初の試みであり、内容は①小・中学校の給食費の無償化(2.35億円)②第2子以降は条件無しで保育料無償化(0.34億円)③待機児童0の実現(0.21億円)、という3つの投資を行うというものです。市の合計特殊出生率は1.08ですが、人口増加だけを狙うのではなく、子育て環境をより良くしていこうという先見に投じた試みとなります。
ピースジャムの工房では令和5年4月から自然を活用した保育園をオープンする予定(一般社団法人モリノネが運営する主事業)で、0~2歳児を主な対象として預かるため、上記の③の根幹の問題(市内に0~2歳を預ける施設が無い)という需要にピッタリとハマります。
市の事業は地域にどんな可能性を拓くと思いますか?
全くわかりませんが、根拠のない無責任な妄想はあります。
子育て環境への方策(企業誘致も含め)と予算が組まれたことで、児童福祉や子育て環境といった特殊かつニッチな領域へ一般の方が参入する障壁が消え、個人や民間の参入が増し、それに伴う協力者や利害関係者の参入も容易化すると思います。
また、社会的課題の解決を目的とした組織・団体の「専門家」が議論していた課題は、課題の当事者や地域住民、地域コミュニティといった「生活者」が考えることとなり、考える頭数が単純に増えます。それによって、問題の当事者ではない人間が設定していた計画や、一向に変化や解決がなされない課題は減少し、具体的で小さく生々しい課題が量産されます。さらに、その課題感は多様に詳細化・表面化していくことで、営利的事業やサービスに福祉的なソリューションの力がつき、地域の価値が多種多彩に発揮され始めます。
それは、場所は問わず共通の規範や価値観・関心などを共有している「機能的コミュニティ」であっても、居住地の縁でつながる「地縁的コミュニティ」であっても同様です。結果、「専門家のみならず、住民みんなで最適な暮らしや持続的な環境をマネジメントし解決する時代へ15年程度かけて進む。」というリスク度外視で希望的観測をしています。
まずは、その一歩となる上記③の待機児童0の実現へ向けて、保育事業を展開する一般社団法人モリノネの保育事業を支え、一方ではその理想的社会の状態を目指して地域の機運醸成に身を投じていきたいと思っています。というわけで保育事業(一般社団法人モリノネ)の応援者・協力者も絶賛募集中です!
0~2歳児に向けた保育事業の最近の様子を教えてください。
2023年4月のオープンに向けて昨年末よりプレオープンをしており、実際にお子さんを預かりながら親御さんや子どもたちに喜んでいただけるよう、忌憚なき声を集めているところです。サービスに満足していただけるよう、慎重かつワクワクしながら備えています。
ちなみに、ここの1番の魅力はなんといっても豊かな自然環境にどっぷり浸れる気仙沼唯一の保育環境ではないかと思います。私は、理や知性の源泉は自然にあるものだと思っているのですが、私が語るまでもなく数多の論文で語られており、自然環境を活用するふれあいは、未就学の児童の情操性の成長や、生きていくための肥やしとなる非認知性の学習にも良い影響を与えます。
もちろん漠然と自然に触れ合うのではなく、保育的観点から十二分に自然の豊かさと学びを提供できるよう、職員は日々自身の学びに時間を大きく費やしています。4月以降、またインタビューいただけたら、より賑わいのある様子をお届けできるかと思います。
最後に、何か一言お願いします。
読んでいただいている皆さまも知るところ、東日本大震災から12年が経ちました。ここで感謝の気持ちを述べたいと思います。
震災時に7ヶ月だった娘はスクスクと成長し、本日小学校の卒業を迎えました(3月17日現在)。体感では短くも、干支が一周するほどなので長い年月です。
12年前、ピースジャムは元バーテンダーの私が「赤ちゃんのお腹は絶対に空かせない」という飲食業者丸出しの安易な行動指針のもと発足し、気の合うメンバーと組織化しました。震災時の親子の需要は肉体的で物質的なものでしたが、徐々に暮らし全般の需要へと変化し、私たちは胃袋の空腹だけではなく、地域の育児環境や家庭環境の慢性的な空腹(Issues)の根を探し、お腹いっぱいに(Resolve)できるよう事業を進めることにしました。
しかし、「地域」という単位に単独の組織では何も成し得ることはできず、現在の子育て事業がこれだけ長くできているのもサニクリーン様をはじめとする協力企業様や、専門家、個人様からのご寄付や知的援助、広報やボランティアに至るまでの想いと手厚いサポートがあってこそだと身に染み、この場をお借りし改めて感謝を申し上げます。
私個人としては、自団体の活動のみならず、子育てへの多くの活動者が増えることを願い、子連れの雇用を検討している企業に新規ビジネスを作るお手伝いをしたり、育児層を受益対象とした起業者への伴走支援を行ったり、政府に子育てにまつわる政策の立案と提言をしたりと、未来の主役である子どもの脇役として、できれば名脇役になれるよう、彼ら彼女らの将来のhub作りに奔走(たまに迷走)しているところです。
いずれにせよ、皆さまのおかげで時間以上に力強く前に進んでいます。 12年もの歳月、東北、気仙沼、そして私たちに寄り添っていただき本当にありがとうございました。今後も、何卒ピースジャムとモリノネの活動の応援をよろしくお願い申し上げます。