視覚障がい者の安全で快適な歩行を支援「公益財団法人 日本盲導犬協会」とは?

日本盲導犬協会でのサニエル

公益財団法人 日本盲導犬協会とは

公益財団法人 日本盲導犬協会は、昭和42年の設立以来、目の見えない人、見えにくい人が行きたいときに行きたい場所へ行くことができるよう、安全で快適な盲導犬との歩行をサポートしている団体。 視覚障がい者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上を目指し、盲導犬の育成や普及啓発、調査・研究など、さまざまな活動に取り組んでいる。
今回はぼくサニエルが普及推進部の山本さんと横江さんにお話を伺ってきました。

普及推進部の山本さんと横江さん

より多くの方に盲導犬との暮らしを提供するために

こんにちは山本さん、横江さん、日本盲導犬協会はどんな活動をしてるんですか?

お話しを伺った山本さん(右)と横江さん(左)

お話しを伺った普及推進部の山本さん(右)と横江さん(左)

こんにちはサニエル!公益財団法人 日本盲導犬協会は、目の見えない人、目の見えにくい人に対して、行きたいときに行きたい場所に行けるよう、良質な盲導犬を提供することを一番の使命としています。現在、盲導犬を希望する方は約3,000 人。それに対して、2015 年度の盲導犬実動数は966 頭とまだまだ足りていないのが現状です。そのニーズにこたえるために、日本盲導犬協会では年間50 頭の盲導犬の安定的な供給を目指しています。

盲導犬は10 歳で引退し、盲導犬ユーザーへは新たな盲導犬が貸与(代替え)されます。年間で育成される半数以上は代替えになるため、新しい盲導犬ユーザーへの貸与が難しくなっているのです。そこで盲導犬の数を増やすために、資金面での基盤づくりや、良質な盲導犬を育成するための繁殖計画にも力をいれています。特に繁殖計画では、交配データや性格分析などの科学的根拠にもとづき、訓練犬から盲導犬になれる確率を上げる取り組みを行っています。

「誰の犠牲の上にも立たない」が盲導犬の育成基本理念

盲導犬の育成について教えてください。

盲導犬と訓練士

訓練では、とにかくほめて伸ばす

盲導犬の育成には「犬も含め、誰の犠牲の上にも立たない」という基本理念があります。です
から、犬が望まない無理やりの訓練は決して行いません。訓練していくなかで、盲導犬に向か
ない性格とわかれば、盲導犬のPR 犬となったり、ボランティア家庭でペットとして暮らしたりと、それぞれの犬に合った進路を選んでいます。

盲導犬の育成の基本は「とにかくほめて伸ばす」ことです。人と同じで犬も褒められるのが大好き。何か指示したことができたら「グッド(よし!)」とほめて、ほめられることがしたい、ほめられることが楽しいということを教えていきます。また、犬が楽しんで訓練を受けられる環境づくりを大切にしています。一頭一頭と丁寧にコミュニケーションを取りながら信頼関係を深めていき、その犬に合った訓練をしています。

PR犬のナディア

普及啓発活動で活躍中。PR 犬のナディア

盲導犬ユーザーが楽しく生活できる社会のために

普及啓発活動も積極的に行っていますね。

デモンストレーションの様子

デモンストレーションの様子

はい。普及啓発活動は、盲導犬と盲導犬ユーザーへの正しい理解を促し、盲導犬ユーザーだけではなく、目の見えない方、見えにくい方が外を歩きやすく、生活もしやすい社会を築くために、たいへん重要な取り組みです。企業やデパートなどのあらゆる場所で、盲導犬の仕事や役割、訓練を行う様子をご覧いただくデモンストレーションや視覚障がいについての講演など、さまざまなイベントやセミナーを開催しています。また、子どもたちが大人になったときに、盲導犬ユーザーがより暮らしやすい社会になるよう、学校での普及啓発活動にも力をいれています。普及啓発活動は月間100 件以上に及ぶこともあり、イベントや募金活動には多くのボランティアの力を借りています。

イベントや募金活動以外にも、パピーウォーカーや繁殖犬、キャリアチェンジ犬、引退犬の飼育、訓練施設内の犬舎の清掃やグルーミング、えさの準備などもボランティアにお願いしています。また、寄付という形で資金面でのボランティアをしていただいている個人や企業・団体様もいらっしゃり、多くの方がさまざまな形で盲導犬を応援してくださっているんです。「活動を通していろんな方と出会え、輪が広がっていくのが楽しい」といってくださるボランティアもいて、盲導犬の活動が社会とつながるきっかけになっているのはうれしいですね。

誰もがいきいきと暮らせる社会のために「心のバリアフリー」を求めていきたい

今後取り組んでいきたいことは?

普及推進部の山本さん

日本盲導犬協会は盲導犬育成の団体というイメージがありますが、活動の一番の目的は視力障がいをはじめとした、障がいを持つ方へのサポートです。2002 年施行の「身体障害者補助犬法」に次いで、2016 年4 月には「障害者差別解消法」が施行されました。この法律のなかに「合理的配慮」という言葉がありますが、これは障がい者が安心して街に出て快適に過ごせるよう、その人が求める方法で配慮を行うことです。例えば、買い物に行って視覚では得づらい情報を言葉で補ってもらうことでスムーズに買い物ができます。障がいを持たれている方は、特別な待遇やサービス、そして完璧なバリアフリーの施設を求めているわけではありません。もちろん、完璧であることがベストではありますが、誰もが同じように生活し、施設を利用できるようにすることが必要なのです。問題があったときに、一緒に考え対応できるような、「心のバリアフリー」を求めています。法律の後押しも受け、世の中に盲導犬ユーザーがどんどん進出していけるよう、今後も社会全体に働きかけていきたいです。

多くの方に安全で快適な盲導犬との暮らしを提供できるよう、新しいことにも挑戦したいと考えています。そのひとつとして、今年3 月に見えない聞こえない「全盲ろう」の盲導犬ユーザーが誕生しました。全盲ろうの方への盲導犬の提供は日本国内で唯一のこと。ご本人はもちろん、日本盲導犬協会にとっても大きな挑戦でしたが、これをきっかけに全盲ろうの方にも盲導犬という選択肢が持てるようになればと思います。

一人ひとりの「おせっかい」が広がる社会になれば、安心して暮らせる社会に

最後に皆さんにメッセージをお願いします。

サニエルと記念撮影(盲導犬協会 普及推進部)

あたたかい対応ありがとう! by サニエル

盲導犬ユーザーだけではなく、視覚障がい者にもっと目を向けてほしいということを伝えたい
ですね。盲導犬ユーザーや白杖で歩行している方を見かけたときには、ぜひ積極的に声かけを
していただきたいです。分からないことは、ぜひご本人に聞いていただければと思います。そ
うすることで、盲導犬に対して正しい知識を得られるきっかけになると思います。

日本人はシャイな方が多いこともあり、街で困っている障がい者を見かけても「誰かがやるだろう」と、声かけせずに通り過ぎてしまうことが多いのではないでしょうか。ぜひ「自分が手助けしなければ」と、行動に移してもらいたいです。視覚障がい者を見かけたら、まずは声を出して相手に自分の存在を伝えましょう。正面に立ち「盲導犬と一緒にいる方、お手伝いできることはありますか?」「白いポロシャツを着ている女性、お困りではないですか?」と自分に話しかけているとわかってもらえるような声かけがポイントです。一人ひとりが関心を持ち、ひと声かける「おせっかい」が広がっていけば、盲導犬ユーザーが安心して活動できる社会になります。日本盲導犬協会も盲導犬の普及啓発活動を通して、多くの人に正しい情報を発信していきますので、誰もが安心して暮らせる社会を私たちと一緒につくっていきましょう。

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