全国砂浜ムーブメント2022 「オンライン 砂浜アクティビスト講座」にいってきました。

「砂浜ムーブメント」とは?

日本自然保護協会(NACS-J)が全国的に実施する「砂浜ムーブメント」は、砂浜が直面する環境問題を解決し、自然豊かな砂浜を守ることを目指した取り組みです。今回は、ぼくサニエルが「砂浜ムーブメント」の一環としておこなわれる「オンライン 砂浜アクティビスト講座」に参加するとともに、日本自然保護協会の櫻井さんにお話を伺ってきました。

日本自然保護協会の櫻井さん

砂浜の魅力や課題をみんなに伝える「砂浜アクティビスト」

日本自然保護協会の櫻井さんと志村さん
日本自然保護協会の櫻井さん(右)と志村さん(左)。

はじめに、「砂浜アクティビスト」について教えていただけますか?

日本自然保護協会では、2019年から「豊かな日本の砂浜を守り続けるために、砂浜を見る目を増やしたい」を合言葉に「砂浜ムーブメント」という取り組みをしています。この砂浜ムーブメントの一環として、今年から募っているのが「砂浜アクティビスト」です。

私たちは、砂浜の魅力や課題を周りに伝えてくれる人のことを砂浜アクティビストと呼び、その方たちの活動を応援しています。砂浜アクティビストは認定制度ではなく、お子様から大人の方まで、「砂浜の自然を見る目」となって行動してくださる方なら誰でも砂浜アクティビストになることができます。

「砂浜の魅力や課題」というお話がありましたが、まず砂浜の「課題」についてお伺いできますか?

砂浜の課題は様々ありますが、大きく2つに分けられると思います。一つは「砂浜の減少」です。本来は砂浜や砂丘があったエリアに家を建てたり道路や護岸を作ったりと、今、砂浜は大きく改変されており、全国的に「痩せた砂浜」が増えています。

砂浜の砂は、初めからそこにあったのではなく、山や崖が削れ、川を流れ、長い年月をかけて砂浜が形成されていきます。しかし、ダムでせき止められて砂の供給が減ったり、気候変動によって海面が上昇したりすると、砂浜はますます減少してしまいます。「21世紀末には日本の砂浜の6割が完全に消失する」と予測している研究結果もあります。砂浜が失われると、砂浜でしか見られない美しい自然も失われてしまいますし、砂浜で暮らす生きものの居場所もなくなってしまいます。

もう一つが、マイクロプラスチックに代表される「海ごみ」の問題です。海ごみに関しては様々な研究がおこなわれていますが、たとえば、マイクロプラスチックを食べた魚を私たちが食べることによる人体への影響など、まだ明らかになっていないこともたくさんあります。一方で、魚や鳥がエサと間違えてマイクロプラスチックを食べてしまったり、漁網がウミガメの体にからまってしまったりといった海の生きものへの問題は各所で起きています。

海ごみの約半分を占めるプラスチックごみが問題なのは、非常に自然分解しにくいということです。たとえば、ペットボトルは自然分解するのに400年かかると言われています。このままプラスチックごみが増えていったら、砂浜はますます汚れてひどい状態になってしまうでしょう。

砂浜は歩けば歩くほど発見があり、知れば知るほどおもしろい。

砂浜で拾ったさまざまな種類の貝殻たち
日本の砂浜には約7,000種もの貝が生息している。

一方で、砂浜の「魅力」はどんなところにあるのでしょうか?

砂浜は、少し歩いてみるだけでもたくさんの発見があり、様々なおもしろみのある場所です。たとえば、砂つぶひとつ見ても、浜によって色や大きさ、質感に違いがありますし、暮らしている生き物も違います。ビーチコーミング(海岸や浜辺に打ち上げられた漂着物を収集・観察すること)をしてみれば、貝殻やビーチグラス、海外からの漂着物など、いろんなものを見つけられ多様性を感じることができます。

日本は海に囲まれた島国で、砂浜は昔から身近な場所でした。魚や貝など、海から得られる自然の恵みはもちろんのこと、貿易をするために船を出したり、遊びやレジャーの場所として利用したり、私たちは砂浜から様々な恩恵を受けてきました。そういった意味でも砂浜は多様な価値のある場所ですし、大切にしなければいけない場所だと思っています。

そのような砂浜の課題や魅力は、まだまだ知られていないということでしょうか?

はい、そう思います。環境保全という観点でも、砂浜や海の保全は、陸の保全に比べると圧倒的に遅れています。自然保護に関心のある人でも、砂浜に目を向けてくれる人はそれほど多くはありません。

私自身も砂浜の現状を知ったのは最近のことで、言わば「砂浜初心者」なんです。実は私、泳げなくて、昔から海が嫌いな子どもでした。ですから、砂浜にも数回しか行ったことがありませんでした。ですが、数年前に日本自然保護協会の先輩に連れて行ってもらったとき、「砂浜って意外とおもしろいんだな」と感じて、そこから徐々に砂浜に興味を持ち、砂浜の現状を知るようになったんです。

以前の私のように、砂浜のおもしろさや素晴らしさに気付いていない方は多いと思いますので、砂浜アクティビストの活動を通して、一人でも多くの方に砂浜のことを知ってもらいたいと思っています。

「砂浜ノート」「砂浜クエスト」など、砂浜への理解を深める仕掛けがいっぱい。

砂浜クエストに取り組む子ども
「砂浜クエスト」の様子。海から遠い場所にも、海ごみの発生源はたくさんある。

砂浜アクティビストは具体的にどのような活動をするのでしょうか?

私たちは、砂浜アクティビストの活動を応援するために、「砂浜ノート」や「砂浜クエスト」といったツールをご用意しています。また、いきものコレクションアプリの「バイオーム」や、ごみ拾いSNSの「ピリカ」とコラボレーションしています。砂浜アクティビストの活動としては、このようなツールやアプリを活用しながら自然観察会やビーチクリーンを開催し、砂浜の魅力や課題を伝えていっていただくというイメージです。

「砂浜ノート」は、砂浜の自然について学べる小冊子です。砂浜ムーブメントがスタートした4年前に作成し、無料で配布しているのですが、各方面からご好評をいただいており、去年までで約55,000部を配布しています。配布先としては、学校や児童館、図書館などが多いです。その他、各地域の自然観察会で配布してもらったり、企業から「社内のビーチクリーン活動で使いたいから」とお申し込みをいただくケースも増えています。

「砂浜クエスト」は、簡単に言えば、海ごみ探索のアクティビティです。「海ごみはどこからやってくる?」という大きなテーマがあり、イラストのマップ上でごみの発生源を探していきます。単にごみを探すだけでなく、探したごみについて考えるのも砂浜クエストにおける重要な時間です。たとえば、カラスがごみ捨て場のごみを漁って散らかしているのであれば、「そうならないようにするには、どうすればいいのか?」をみんなで考えていきます。

砂浜クエストは基本的に子ども向けのアクティビティですが、大人の方や年配の方が入ると、「昔は、飴は個包装じゃなかった」「卵はパックに入ってなかった」というように昔の話も出てきます。そこから、「プラスチックごみを減らすにはどうしたらいい?」「このプラスチックは○○で代用できるのでは?」といった話に発展するなど、様々なアイデアや気付きにつながっていくのが砂浜クエストの良いところだと思います。

本日のオンライン講座でおこなわれた「マイクロプラスチック探し」について教えてください。

マイクロプラスチック探しは、事前に参加者さんにお送りした「砂浜の砂」からマイクロプラスチックを探してもらうワークショップです。砂浜クエストをやってみると何となく海ごみが発生する流れは理解できますが、なかなか実感をともないません。そこで、実際に体験できる企画を用意したのです。

子どもたちからは毎回、「これだけ少ない砂の中にも、こんなにマイクロプラスチックがあるんだ」とか、「小さくて拾うのが大変」といった感想が聞かれます。マイクロプラスチック探しの体験から、「プラスチックごみは大きいうちに拾わないといけないんだ」といったことを実感してもらえたらいいなと思っています。

本日のオンライン講座でおこなわれた「リース作り」について教えてください。

リース作りは、貝殻や小石などを使ってリースを作る低学年向けの企画です。「一つの砂浜を表す」というテーマでリースを作るので、砂や小石、貝殻やビーチグラスだけでなく、よく見るとごみも落ちているというように、実際の砂浜の縮図のようなリースができあがります。砂浜に行かなくても、子どもたちが楽しみながら砂浜の多様性を感じられる「最初のステップ」になればいいなと思っています。

今日、参加してくれた子どもたちには、どんなポイントでもいいので「砂浜っておもしろいんだな」と感じてもらえたらいいなと思います。今日のことは時間が経つと忘れてしまうかもしれませんが、少し大きくなってから、ふとしたときに砂浜のおもしろさや素晴らしさを思い出し、それが自然に対する自然を守るちからつながってくれたら嬉しいですね。

「砂浜ってすごい!」を親子で一緒に体験してほしい。

グンバイヒルガオが広がる豊かな砂浜
グンバイヒルガオが広がる豊かな砂浜。日本の海岸には約280種の海浜植物が生息している。

砂浜アクティビストの今後の展望を教えてください。

今後は、今回のようなオンライン講座だけでなく、オフラインでも様々なイベントを企画しています。自然観察会やビーチクリーンが中心になりますが、企業とコラボして趣向を凝らしたイベントも多数企画していますので、ぜひお気軽にご参加ください。

その際は、ぜひ親子で参加していただきたいなと思っています。親御さんにとっても、「砂浜ってすごいんだ!」という驚きや発見がたくさんあるはずです。また、お子さんだけだと理解が追い付かないところもあるかもしれませんので、隣でフォローしていただきたいなと思います。

砂浜アクティビスト講座が、砂浜の豊かさや素晴らしさに触れる入り口になったらいいなと思いますし、そこから一人でも多くの方が砂浜の保護に興味を持ち、私たちと一緒に「砂浜の自然を見る目」になってくれたら嬉しいですね。

>> 砂浜アクティビスト講座など、砂浜ムーブメントのイベント・活動情報はこちら

************************************

ホームページ:http://www.nacsj.or.jp/

電話番号:03-3553-4101 メール:shizen@nacsj.or.jp

住所:東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F

************************************

応援している社会貢献団体

TOPICS

BACK NUMBER

hivelocity

google