全国砂浜ムーブメント2023「オンライン 砂浜アクティビスト講座」にいってきました。

サニエルと職員の皆様の写真

日本自然保護協会(砂浜ムーブメント)とは?

  • 上記写真の左が櫻井さん、右が志村さん

日本自然保護協会が実施する「砂浜ムーブメント」は、砂浜が直面する環境問題を解決し、自然豊かな砂浜を守ることを目指した取り組みです。今回は、ぼくサニエルが「砂浜ムーブメント」の一環としておこなわれる「オンライン 砂浜アクティビスト講座」に参加するとともに、担当の櫻井さん・志村さんに、自然保護の世界目標である「30by30」や砂浜の魅力など、いろいろなお話を伺ってきました。

日本自然保護協会の櫻井さんの写真

「30by30」~2030年までに陸と海の30%以上を自然環境エリアとして保全する

日本自然保護協会の志村さん。

──「砂浜ムーブメント」とは? 「30by30」とは?

志村さん:

日本自然保護協会では、2019年から「豊かな日本の砂浜を守り続けるために、砂浜を見る目を増やしたい」を合言葉に「砂浜ムーブメント」という取り組みをしています。砂浜ムーブメントが目指しているのは自然豊かな砂浜を守ることですが、この取り組みのさらに先にある目標が「30by30」です。

30by30というのは、「2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全する」という世界目標のことです。日本では環境省が主導していますが、私たち日本自然保護協会もコアメンバーとして30by30の取り組みに参加しています。

30by30の目的は、健全な生態系を回復させ、豊かな恵みを取り戻すことです。私たちが30by30を目指すことで温暖化などの気候変動問題の解決に貢献できるほか、海の生産性向上や災害に強い国土づくりなど、様々な効果が期待されています。日本の保護地域を30%まで拡大すると、生物の絶滅リスクが3割減少するという試算もあります。

<砂浜ムーブメントの詳細はこちら>
https://www.nacsj.or.jp/sunahama_movement/
<30by30の詳細はこちら>
https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/

──現状の保護地域はどのくらい?

志村さん:

2021年8月時点では、日本の保護地域は陸域が「20.5%」、海域が「13.3%」となっています。それぞれ30%まで引き上げることが目標とされていますが、引き上げる方法は大きく2つあります。一つは、国立公園や国定公園などの保護地域を拡張することです。もう一つが、企業や民間団体など、様々な関係者の手で生物多様性が保全されている場所を増やすことです。環境省は、世界基準に基づいて「自然共生サイト(※)」の認定という仕組みを設けています。

※民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域で、国によって認定された区域のこと

国立公園など国が管理する場所だけでなく、里地里山、企業林、社寺林など地域や企業・団体によって生物多様性の保全が図られている場所も、環境省によって自然共生サイトとして認定されれば30%に組み込まれることになっています。

30%という数値に対して「そんなに!?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、たとえば、自分の家を子どもに譲る場合で考えてみると、30%しか使えない家を譲ろうと思うでしょうか。一軒の家を譲り渡すなら、丸ごと使える状態で子どもに残したいと考えるはずです。これは、自然も同じことが言えます。私たちは自然の恵みによって暮らしているわけですから、将来、子どもたちがきちんと自然の恩恵を受けられる状態で残していくのは、ある意味、当たり前のことです。そう考えると、30%という数値は決して高い目標ではないのかなと思います。

──海の保全が遅れている理由は?

志村さん:

先ほどの数値からも明らかなように、海のほうが保護地域が少なく、保全が遅れているのが現状です。これには様々な要因が考えられますが、そもそも人間が陸上で暮らす生き物であることが大きいでしょう。また、陸のほうが「分かりやすい」という点もあります。たとえば、森林を半分切り拓いたら、残りは半分だねというように陸地の状態は目に見えます。ですが、海の中の状態は陸から見ているだけでは分かりません。陸地に比べると現状を把握するのが大変なので、その点が保全の遅れにつながっている面もあるでしょう。

私たちも「海の30%」の目標達成に貢献すべく、より実効性のある取り組みをしていきたいと思っており、その一つとして力を入れているのが「砂浜ムーブメント」でもあります。砂浜は陸と海をつなぐ境界線なので、砂浜の自然を守ることは海の自然を守ることにもつながります。一人でも多くの方に、砂浜という観点から海の自然に関心を持ってもらいたいと思っています。本日開催した砂浜アクティビスト講座も、子どもたちに砂浜の魅力を知ってもらい、親子で砂浜に遊びに行くきっかけになったらいいなと思って企画した講座です。

オンライン砂浜アクティビスト講座の様子
オンライン砂浜アクティビスト講座の様子。貝殻や小石でつくった「砂浜リース」の完成!(
プライバシー保護のため画像を加工しています)

レアな漂着物がいっぱい!?砂浜に遊びに行くなら「嵐のあと」がおすすめ

日本自然保護協会の櫻井さんのインタビュー風景

──砂浜に行くおすすめの季節や時間帯は?

櫻井さん:

私がおすすめしたいのが「冬の砂浜」で、特に日本海側はおすすめです。北からの季節風が強いのでかなり波が荒く、波がいろいろなものを巻き上げてきます。ですから、夏の時期にはあまり見かけないレアな貝に出会えます。生き物だけでなくゴミも同じで、ビーチコーミング(海岸や砂浜に打ち上げられた漂着物を収集・観察すること)を趣味にしているビーチコーマーさんにお話を聞くと、昔の陶器の欠片など珍しいものが打ち上がることも多いようです。「お宝発見」的な楽しみ方ができるのが冬の日本海側の砂浜だと思います。

季節にかかわらずおすすめなのは、「嵐が過ぎ去ったあとの砂浜」です。台風などで海が荒れたあとの砂浜は、普段の砂浜とはまったく違う景色が広がっています。もちろん、嵐の直後に行くのは危険なので安全を確認する必要はありますが、天候が回復したあとに行ってみるといろんなものが漂着していますので、「なんだこれ!」という驚きや発見がたくさんあるはずです。

砂浜は暑さ・寒さがダイレクトに伝わる場所なので、夏場・冬場は結構過酷な環境になります。ですから、夏に砂浜に行くなら朝一番か夕方です。砂浜で日の出を迎えるのもおすすめですし、夕方の時間帯も西側であれば夕日がきれいに見えるのでおすすめです。冬であれば、気温が上がる日中に行くのが良いでしょう。

ビーチコーミングの様子
ビーチコーミングの狙い目は、波が作った打ち上げラインや波打ち際。

──親子で砂浜に遊びに行くとき、持っていきたいアイテムは?

櫻井さん:

本日の講座でも使った「砂浜ノート」は、ぜひ持っていっていただきたいアイテムです。何の予備知識もないまま砂浜に行くと、「わー!海がきれい!」と、写真を撮るだけで終わってしまいがちです。それでは、ちょっともったいないなと思います。砂浜ノートには、貝殻や植物、漂着物など、砂浜の見るべきポイントがまとめられていますので、いろんな楽しみ方ができるはずです。無償で配布していますので、ぜひお気軽にお申し込みください。

<砂浜ノートのお申込みはこちら>
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSf8jfILMlIrmQkGOiFQv9sIfjQSYhyVGtdj_zmpht7UoT1fag/viewform

志村さん:

お子さんとビーチコーミングをしたら、「ビーチグラスを持って帰りたい」「貝殻を集めたい」ということになると思います。そのとき、ジップロックなどの袋があると便利です。うちのスタッフがよく使っているのが、「温泉バッグ」と呼ばれるメッシュでできた小さめのバッグです。メッシュなので濡れたものも入れられますし、砂だけが落ちてくれるのでビーチコーミングには最適です。

お子さんと行く場合は、小さなスコップもあるといいですね。貝殻を探すだけなら波打ち際を歩いていれば見つかりますが、やはりお子さんは、あれだけ広大な砂場があれば掘りたくなるものです。好きなだけ砂を掘れる場所なので、思う存分に掘って、楽しい時間を過ごしてもらいたいなと思います。

櫻井さん:

「Biome(バイオーム)」というアプリもぜひ使っていただきたいですね。バイオームは、AIによる生き物の名前判定機能があり、砂浜で見つけた生き物や植物の写真を撮ってアップすれば、その場ですぐに名前が分かります。子どもに「これ何?」と聞かれて親が沈黙してしまうのは「あるある」ですが、バイオームがあれば写真をアップするだけで解決できるかもしれません。それだけでなく、生き物の「レア度」も出てくるので、子どもたちは「やった!レア度Bだ!」というように盛り上がってくれます。お家に帰ってからも、写真をアップしたり図鑑をつくったりして楽しめるのでおすすめです。

<Biome(バイオーム)の詳細はちら>
https://biome.co.jp/app-biome/

おすすめは富津海岸や高浜海岸!お気に入りの砂浜を見つけよう

ビーチコーミングでとれた貝殻の写真
櫻井さんおすすめの富津海岸。ビーチコーミングをすれば、色とりどりの貝殻やビーチグラスが拾える。

──おすすめの砂浜は?

櫻井さん:

私は、千葉県富津市の「富津海岸」です。いろんな種類の貝が打ち上がる多様性に富んだ砂浜で、人が少ないのも良いところです。ビーチコーミングをするとき、周りの人が気になるという方もいらっしゃいますが、そういう心配はまったくないくらい人が少なく、ビーチコーミングがしやすい環境だと思います。

志村さん:

私は、五島列島の福江島にある「高浜海岸」です。日本一美しいと言われる白い砂浜があり、遠浅の海の青さが目にしみるような海岸です。ここは、海の中から砂浜や後背湿地も含め、陸までが一帯で国立公園に指定されています。海と陸が砂浜でつながっている様子がすごく良く分かる場所で、砂浜の自然を取り戻そうと思ったときに「こういう状態に戻せばいいんだ」という見本になる砂浜だと思います。

──砂浜に遊びに行くときの注意点は?

志村さん:

砂浜と言うとビーチサンダルで行きたくなりますが、ビーチサンダルは水に入ったときに足を持っていかれがちです。それでバランスを崩して転んでしまうこともあるので、あまりおすすめできません。安全性と歩きやすさを考えたら「濡れてもいい靴」がいちばんです。お子さんであれば、古い上履きなどが良いかと思います。

砂浜は、潮の満ち引きによって状況が大きく変わってきます。満潮になると砂浜が全部波をかぶってしまうような場所もあり、危険を伴います。ですから、時間帯による潮位は調べていったほうが良いでしょう。また、季節によっては過酷な環境になるので、何かしらの食べ物・飲み物は必須です。近くに売っていない場所も多いので、忘れずに準備していきましょう。

高浜海岸の写真
志村さんおすすめの高浜海岸は「日本一美しい砂浜」と言われている。

──最後にメッセージを

櫻井さん:

私たちも砂浜ムーブメントで海の自然観察会をしていますし、自治体や水族館、博物館でも磯の観察会やビーチコーミングなどのイベントがおこなわれています。砂浜初心者の親子連れの方は、このようなイベントに参加するのがおすすめです。気になることがあれば聞けますし、気軽にかつ安全に楽しめると思います。

今後も砂浜アクティビスト講座や自然観察会を通して、砂浜の魅力に触れる「きっかけ」をたくさんつくっていきたいと思っています。その結果、砂浜に興味を持ち、砂浜を大切にする人が増えていったら嬉しいですね。

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