総務部【人事労務】
視覚障害のあるスタッフも含め、職員全員が働きやすい環境づくりを。
主な業務内容
協会の職員が快適に働くことができ、自分の仕事に集中できるような環境づくりが、私たち総務部の重要な役割です。協会には、視覚に障害のある職員が2名おり、そのうち1名は盲導犬ユーザーです。このような視覚障害のある職員も含め、職員全員の働きやすさを考えて仕事をしています。
総務部のなかで私は、主に総務・労務の仕事をおこなっています。具体的には、職員の勤怠管理や通勤費の管理、人件費の予算作成、労基署に提出する書類作成や障害者雇用の助成金申請、職員研修などです。日本盲導犬協会は、神奈川、静岡、仙台、島根に訓練施設があり、それぞれの拠点で総務スタッフが働いています。各拠点との連携も重要なので、部全体として月に1回オンライン会議をおこない、コミュニケーションを図るようにしています。
課題
ここ数年は、働く職員を守るために、メンタルヘルス対策やハラスメント対策に力を入れています。研修もその一つで、管理職向けにハラスメント研修やコンプライアンス研修をおこない、管理職全員が同じレベルの知識・情報を持ってマネジメントできるようにしています。また、職場では言えないような悩みでも第三者に気軽に相談できるように外部に相談窓口を設けました。このような活動を通して、職員がより安心して働ける環境づくりをしていきたいと思っています
やりがい
以前、私は比較的大きな企業で総務として働いていたのですが、日本盲導犬協会は120~130人くらいの組織です。以前と大きく違うなと感じているのが、既存の仕組みを変えようと思ったときに、それを実現しやすいということです。「こういう課題があるんだったら、来月からこうしてみよう」というように、意見や提案がスピーディーに反映されやすい職場です。このように、自分たちでどんどん職場を良くしていけるのが、私にとっては大きなやりがいになっています。
総務部が盲導犬ユーザーさんと関わる機会は少ないのですが、たまに街頭の募金活動に参加することがあります。そのときに、ユーザーさんから「いつもありがとうね」といった言葉をもらえると、ここで働いていて良かったなと思いますね。
総務部【財務経理】
支援者の皆さまからいただいた寄付金を正しく、有効に活用する。
主な業務内容
財務経理の仕事は、協会のお金を管理することです。支援者の皆さまからいただいたお金が、法やルールに基づいて正しく処理されているかどうかチェックするのが、私たちの役割です。
財務経理として、不正がおこなわれていないか、常に監視の目を光らせることは大切ですが、ここで働いている職員はみんな誠実で、不正なんかしそうにない人ばかりです。だからと言って経理が注意を怠ってはいけないのですが、そういった信頼感があるのは、民間企業で働いていた頃との大きな違いだなと感じています。
課題
日本盲導犬協会の財源は、ほとんどが寄付金で成り立っています。ここ数年はコロナ禍の時期も含め、多くの皆さまからたくさんのご寄付をいただいています。
公益財団法人として「いただいた寄付金をどのように使い切っていくのか」という点がいちばんの課題だと思っています。寄付金を余らせることなく、有効活用していく必要がありますので、どんどん新しいことをして、もっと盲導犬ユーザーや支援者の皆さまに還元していかなければいけません。
しかし、協会の経理業務はまだまだアナログで非効率な部分が多いほか、人手不足という課題もあります。そのため、なかなか新しいことに着手できていません。ですから、まずは経理の業務効率化を図っていきたいと思っています。それによって時間に余裕が生まれてくれば、もっと新しいチャレンジができるのではないでしょうか。
こだわり
財務経理は、盲導犬ユーザーや支援者の皆さまと直接関わることのない部署ですが、「裏方としてどうあるべきか?」ということは常に考えています。盲導犬ユーザーや支援者の皆さまにご満足いただくためには、その人たちと直接関わる協会の職員が、どれだけ気持ち良く働けているかが重要です。財務経理という仕事を通して、そんな職場づくりに貢献できればいいなと思っています。
ICTチーム
視覚障害者に配慮した基幹システムやWebシステムの保守・運用。
主な業務内容
ICTチームは、協会の基幹システムやWebシステムの保守・運用を担う部署です。その他、パソコンなどの電子機器や通信機器、ネットワークなどの保守・運用もしています。協会では視覚障害者の職員が働いていますので、みなさんがスムーズに基幹システムを利用できるようにサポートしたり、要望に応じてシステムを改修したりすることもあります。
協会のホームページには、盲導犬ユーザーや視覚障害のある方がアクセスしますが、目の見えない方・見えにくい方は、スクリーンリーダーという読み上げソフトを使って内容を理解します。スクリーンリーダーにスムーズに読み上げてもらえる構造でホームページをつくることも、私たちの重要な仕事です。
また、協会の基幹システムでは犬の管理もおこなっています。犬が生まれたときの記録から、盲導犬になるためにどのようなトレーニングをしているのかという日々の訓練記録、医療記録や関わってくれるボランティアさんの記録まで、膨大なデータを蓄積しています。
課題
今後は、基幹システムのデータをもっと活用していきたいなと考えています。たとえば、犬の訓練データを分析することで、「こういう犬の場合、こういう訓練が効果的なのではないか」というように、データの分析結果をもとに訓練の質を高めていくようなイメージです。
ITの世界は日進月歩で、最近で言えばChatGPTなど次々に新しい技術・サービスが生まれています。このような流れに取り残されないよう、常に最新技術にアンテナを張り、協会のシステムを充実させていくことも、ICTチームに求められる役割だと認識しています。
やりがい
私は元々、民間のシステム会社で働いていました。会社として利益を追求するのは当然ですが、「いかに儲けるか」ということばかりが重視されていたように思います。一方で、日本盲導犬協会は仕事に対する価値観がまったく違います。「どうしたら視覚障害者が暮らしやすい社会をつくれるか」というところに目的があり、みんながその目的に向かって仕事をしています。そこが私にとってはいちばん満たされる部分であり、大きなやりがいになっているところです。
広報・コミュニケーション部
あらゆるメディアを通して、盲導犬や視覚障害に関する正しい理解を促す。
主な業務内容
広報・コミュニケーション部は、盲導犬や視覚障害についての正しい理解を広めるべく、あらゆるメディアを通して広報活動をしている部署です。ホームページやYouTube、各種SNSのほか、テレビや新聞、ラジオなどのマスメディアも活用して積極的に情報を発信しています。また、商業施設でイベントを開催したり、事業者向けにセミナーをしたり、小中学生に対して福祉授業をおこなったりしています。
会報誌の発行も私たちの重要な仕事です。年に4回の会報誌を通して、支援者の皆さまに盲導犬ユーザーの気持ちを伝えたり、盲導犬ユーザーにボランティアさんの思いを届けたりと、ある意味で「架け橋」のような仕事をしています。
課題
盲導犬同伴での受け入れ拒否問題は、継続の課題の一つです。盲導犬ユーザーは盲導犬を連れて不特定多数の人が入ることができる施設・店舗にも行けることが身体障害者補助犬法で約束されているのですが、法律が十分に認知されていなかったり、盲導犬の受け入れに対する不安もあったりして、まだまだ受け入れ拒否に遭う盲導犬ユーザーが多いのが現状です。このような現状を改善すべく、様々なメディアで普及推進活動をおこなっています。加えて、アドボカシー活動にも力を入れています。これは、盲導犬ユーザーが受け入れ拒否に遭ったとき、たとえば、そのお店と直接話をするなど、問題解決のために積極的に働きかける活動のことです。
今後は、もっとデータに基づいた情報発信をしていきたいと思っています。私たちは、盲導犬ユーザーさんに聞き取り調査をしたり、一般市民を対象にしたアンケート調査をしたりしていますので、そのようなデータを示しながら、盲導犬ユーザーを取り巻く実情を広く社会に伝え、誰もが暮らしやすい社会を目指していきたいです。
やりがい
会報誌をつくる際は、いろんな人に取材をします。そのときに、ユーザーさんから「盲導犬と歩き始めて、こういうことができるようになった」といったお話を聞いたり、ボランティアさんから「盲導犬の育成に関わって、家族の絆が深まった」といったお話を聞いたりすると、すごく嬉しい気持ちになります。そういったお話を「もっといろんな人に知ってもらいたい」という思いが、私の原動力になっています。
視覚障害サポート部
盲導犬を持つ・持たないにかかわらず、目の見えにくい人を広く支援。
主な業務内容
協会内での通称はVS部と呼ばれています。VSは「Visually Support」の略で、日本語で言えば「視覚障害サポート」ということになります。部署名のとおり、視覚障害のある方を広く支援している部署です。具体的な業務の一つが、すでに盲導犬を持っているユーザーさんとのコミュニケーションです。イベントなど様々な情報を発信したり、盲導犬の健康診断のご案内をしたりしています。
もう一つが、これから盲導犬を持ちたいと思っている方への情報提供です。お問い合わせをいただいた後、大きく3つのステップをご用意しています。最初に、盲導犬に関する正しい情報をお届けする「オンラインセミナー」をおこないます。次に、希望される方に「盲導犬体験歩行会」をご案内し、訓練中の犬と歩行体験をしてもらいます。最後に、盲導犬のお世話の仕方などを体験してもらう1泊2日の「宿泊説明会」をおこないます。この一連の流れを担っているのが、私たちVS部です。
また、「視覚障害リハビリテーション」というサービスも提供しています。これは、目が見えにくくなってお困りの方に、パソコンやスマホを声で操作する方法をお教えしたり、白杖を使って歩く練習をしてもらったりするものです。
課題
視覚障害リハビリテーションの認知拡大が、一つの課題だと思っています。日本盲導犬協会は、どうしても「盲導犬を育成・提供している団体」というイメージが強いのですが、盲導犬と歩きたい人だけでなく視覚障害者の方全般を、様々な情報提供や訓練によってご支援しています。盲導犬を持つ・持たないにかかわらず、目が見えにくくなって困っている方であれば、どなたでも視覚障害リハビリテーションをお受けいただけます。役所への申請などの手続きも必要ありませんし、お金もかかりません。
「気軽に利用できる無料のサービスがあるんだよ」ということをもっと多くの方に知ってもらうために、今後は情報発信に力を入れていきたいと思っています。
渉外部
支援者の皆さまから寄付・募金を集め、持続的かつ安定的な協会運営を実現する。
主な業務内容
日本盲導犬協会の事業は90%以上が寄付・募金で成り立っています。この寄付・募金を支援者の皆さまから集める窓口を担っているのが渉外部です。おかげさまで、個人、法人、団体と多くの皆さまから毎年ご支援をいただいております。その理由としては、広報・コミュニケーション部が様々なメディアで、盲導犬や視覚障害者に関する普及推進活動や情報発信をしていたり、訓練部による盲導犬育成の実績が着実に積み上げられていることなどが、影響していると考えます。また、以前に比べ、日本全体に寄付文化が浸透してきていることも理由の一つではないかと感じています。
渉外部の業務は支援者の皆さまとのコミュニケーションが大半を占めますが、視覚障害者や盲導犬ユーザーと関わる機会もあります。たとえば、企業や団体が主催する「チャリティーイベント」や、店舗が従業員向けにおこなう「盲導犬ユーザーの受け入れセミナー」などでは、盲導犬ユーザーにご協力をいただき、実体験をお話ししていただくことがあります。このようなとき、渉外部が、盲導犬ユーザーと企業・店舗の仲介のような役割を果たしています。
課題
大きく2つの課題があると考えています。一つが、支援者の皆さまにさらにご満足いただけるよう、新しい取り組みをしていきたいということです。会報誌や御礼状をお届けしたり、盲導犬の育成実績や業務報告をしたりするのは当たり前のことですが、それ以外に支援者の皆さまに「応援して良かった」と感じてもらえるような取り組みをしていきたいと日々模索しています。
もう一つが、既存のやり方にとらわれない「新しいご支援の集め方」を考えることです。たとえば、募金箱は協会の大きな財源の一つになっていますが、昨今は電子マネー化が進み、人々が小銭を持たない時代になっています。近い将来、募金箱がなくなることも考えられます。そうなったときにも、しっかりと支援を集めて、事業を継続・維持できるような新しい寄付・募金集めの方法を考えているところです。
大切にしていること
渉外部のモットーである「Face to Face」「Heart to Heart」を心掛け、常に感謝の気持ちをもって、丁寧にコミュニケーションを図ることを大切にしています。数多くの皆さまから託されている支援という「想い」を胸に、引き続き、盲導犬の育成や視覚障害者福祉の向上に努めてまいります。