子どもたちが笑顔で幸せに過ごせる未来をつくる「すべてのこどもに自然を!プロジェクト」

櫻井さんと小林さん

すべてのこどもに自然を!プロジェクトとは?

  • 公益財団法人 日本自然保護協会

近年は、全国的に子どもの自然体験が減少するとともに、家庭の境遇の格差が子どもの自然体験の格差につながっていることも課題になっています。「すべてのこどもに自然を!プロジェクト」は、家庭の環境によらず、すべての子どもに自然の原体験を届ける取り組みです。今回は、ぼくサニエルが日本自然保護協会の櫻井さんと小林さんに「すべてのこどもに自然を!プロジェクト」についてお話を伺ってきました。

子どもたちが「幸せに生きる未来」をつくる挑戦。

小林さん
日本自然保護協会の小林さん。プロジェクトでは乳幼児向けの活動を担当。

──すべてのこどもに自然を!プロジェクトの趣旨を教えていただけますか。

小林さん:文字どおり、すべての子どもに自然体験を届けようというプロジェクトですが、その背景には、子どもの自然体験が年々減っているという課題があります。幼少期の自然体験が少ないと、「自分も自然の一部なんだ」「人と自然は一体のものなんだ」といった価値観が育ちにくくなります。

このプロジェクトの根底にあるのは、子どもたちがずっと笑顔で幸せに過ごせる未来をつくることです。たとえば、2100年になると猛暑日が年間で50日増えるという予測がありますが、「自分と自然が一体である」といった価値観が土台にないと、こうした問題を解決するのは難しいのではないかと思っています。

夏も外に出て楽しく遊べる。いろんな魚がいて、食べ物も十分にある。そんな持続可能な世界をつくれる子どもを育てたいという思いがあります。幼少期からの自然体験を通して、未来の自然の守り手を育成することで、子どもたちが自分の力で幸せに過ごせる未来をつくることが、本プロジェクトの大きな目的になっています。

幼少期~小学生の自然とのふれあい経験
昆虫や水辺の生物を捕まえること
出展:https://www.nacsj.or.jp/wp/wp-content/uploads/2018/01/kodomoP.pdf

私たちも自然体験イベントなどを通して、虫が嫌いな子や自然遊びが苦手な子が増えていることは実感しています。バッタやテントウムシが気持ち悪いという子もいますし、土や泥を触れない子もいます。驚いたのは、どんぐりを触れない子がいたことです。

櫻井さん:子どもの自然体験が減っている理由は様々ですが、昔と今の小学生の違いで言えば、「道草を食わなくなったこと」があります。昔は、登下校の途中で道草を食うのは当たり前の光景で、子どもたちはそこでいろんな発見をして、いろんな能力を伸ばしていたように思います。最近はバス通学が増えていることもあり、道草をする子はあまり見かけなくなりました。 また、家庭の境遇の格差による「自然体験格差」があることも明らかになっています。年収が低い家庭は、子どもに自然体験をさせたくてもできない。ひとり親家庭は、マンパワー的にも時間的にも子どもと出かけるのが難しい。こうした格差が広がっているのが昨今の傾向です。このような「自然体験をしにくい子ども」に自然体験を届けることも、本プロジェクトの方針の一つです。

価値観の土台を育てるため、乳幼児期から「本物の自然体験」を。

乳幼児プロジェクトの様子
保育園に出向いて、乳幼児の自然体験を支援する「おさんぽ応援団」。

──すべてのこどもに自然を!プロジェクトの活動内容を教えていただけますか。

小林さん:乳幼児向けと小学生向けで活動内容が異なっています。私からは乳幼児(未就学児)向けの活動についてご紹介します。

全国では数多くの子ども向け自然体験イベントがおこなわれていますが、乳幼児向け、特に2歳以下を対象としたイベントはほとんどありません。ですが、外の情報をどんどん吸収して価値観を形成したり、粘り強さや主体性といった非認知能力を伸ばしたりするうえで、乳幼児期の自然体験はすごく大事だと言われています。「0・1・2歳のうちに人生における価値観の土台が形づくられる」といった研究もあります。

そのため、本プロジェクトでは保育園に出向いて、乳幼児の自然体験を支援する活動をしています。これまでの自然体験イベントは、親が情報を見つけて申し込み、参加する形がほとんどでした。ですが、子どもの自然体験がどんどん減少していることからも、従来のやり方では限界があることは明らかです。

こうした反省から、「申し込みを待つのではなく、こちらから届けにいこう」と発想を転換しました。保育園に出向いて、保育時間に組み込んでもらえば、親の経済的余裕や時間的余裕にかかわらず、そこにいるすべての子どもに自然体験を届けられます。

この活動は「おさんぽ応援団」と呼んでいるのですが、具体的には、日本自然保護協会が認定している自然観察指導員が2名以上のペアになって保育園や幼稚園、こども園に行き、子どもたちと一緒にお散歩をしながら自然観察・自然体験をおこないます。

また、保育士さん向けの研修もおこなっています。保育の現場からは「子どもたちに自然体験をさせたいけど、やり方が分からない」という声が聞かれます。こうした保育士さんに、自然体験のネタを見つける方法や、子どもへの質問を通して自然体験を促す方法などをお伝えしています。

──小学校の理科の授業でも自然について学ぶと思いますが、それでは遅いということでしょうか。

小林さん:決して遅くはありませんが、早いほうが良いと考えています。これは、小学校1年生くらいになると、虫の好き嫌いや自然遊びの好き嫌いがはっきり分かれているという傾向もあるためです。

3歳未満の子どもでも、「虫がいるから花があって、花があるから虫が生きられるんだ」というような自然の仕組みを感覚として理解できます。ただ、こうした気づきや学びを得るためには、「体験」が不可欠です。小学校の理科の授業ではデジタル教材が活用されるようになっていますが、それでは体験になりません。

自然の世界では、学校で習うこととは違う現象があちこちで起きています。蝶々は葉っぱに卵を産むと習いますが、実際はコンクリートに産むこともあります。ですから、本物を体験することが大切なんです。タブレットを見て覚えるのではなく、本物に触れて気づく。そんな自然体験を、できるだけ小さいうちに届けたいと思っています。

櫻井さん: 本物に触れないと、仕組みを理解することはできません。自然にはいろんな姿があって、 ある意味で正解がないものです。そこから「答えらしきもの」を見つけられる子になるには、やはり本物を体験することが大切です。

私たちの自然体験は見るだけでなく、匂いや手触り、音や味も含め、五感を使うことを重視しています。小さい頃から、五感を使った本物の自然体験をしてもらいたいなと思います。

ネイチャースクールが目指す「自然体験格差」の解消。

櫻井さん
日本自然保護協会の櫻井さん。プロジェクトでは小学生向けの活動を担当。

──小学生向けの活動について教えていただけますか。

櫻井さん:小学生向けには、企業・地域と連携して「ネイチャースクール」をはじめとする自然体験の場を提供しています。ネイチャースクールは、1泊2日あるいは2泊3日の自然体験イベントで、親子で参加していただくものです。多くの企業に協賛をいただいていますので、参加費は無料です。

先ほどお話ししたとおり、私たちは「家庭の境遇の格差による自然体験の格差をなくしたい」「自然体験をしにくい子どもに自然体験を届けたい」という思いがあります。ですから、こうした家庭を支援している団体と連携して、参加者を募っています。たとえば、困窮世帯を支援している「キッズドア」さんや、ひとり親家庭をサポートしている「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」さんなどです。

また、小学生向けの活動とは少し違いますが、今力を入れているのが、「自然体験の力を見える化する」活動です。これは、「自然体験が子どもにどのような影響を与えるのか?」を測る取り組みで、より良い自然体験を、より多くの子どもたちに届けることを目的にしています。

幼少期の自然体験が、性格や価値観、あるいは非認知能力にどのような影響を与えるのかを可視化して、その重要性を明らかにしたいと思い、大学・研究機関と一緒に取り組んでいます。自然体験によって自然への意識がどう変わるかは、一つのポイントです。分かりやすい例で言えば、「虫が嫌いだったけど好きになった」「自然への愛着が深まった」「自然保護の意識が高まった」といった変化が生まれ、それがどのような行動変容につながったのかというような影響度合いを測定します。

測定方法はアンケートをベースにしています。子ども向けには、たとえば「土に触るのが嫌だと思いますか?」「行きたいと思える公園がありますか?」といった質問をします。非認知能力などは、たとえば「お子さんは机に向かって集中して作業できますか?」といった質問に親に回答してもらい、自然体験の前後で比較するような形です。アンケートでは「親から見た子どもの変化」など、自由記載の定性データも収集しており、これから定量データと定性データを組み合わせて解析を進めていくところです。

小さな発見が、子どもの未来を育てる。

気軽に自然体験イベントに参加してみよう!

──子育て家庭へメッセージをお願いします。

小林さん:小さいうちは、子どもは親についていくしかありません。親の影響は極めて大きいものです。身近な場所でも自然体験はできるので、親御さんはぜひお子さんと一緒に自然体験を楽しんでもらいたいなと思います。

お母さんが虫が嫌いなのであれば、無理に好きになってとは言いません。ただ、お子さんの前で「ギャー」と悲鳴をあげるのはこらえてほしいですね(笑)。お子さんに「虫は怖いもの」「虫は邪魔なもの」といった価値観を植え付けることになってしまうので、グッと我慢して、お子さんを見守っていてもらいたいなと思います。

櫻井さん:小学生になると行動範囲が広がり、できることもどんどん増えていきますので、ぜひネイチャースクールや自然観察会などのイベントにご参加いただければと思います。

全国のイベント情報 | 日本自然保護協会

もちろん、私たちが主催しているもの以外にも、全国各地で自然体験イベントがありますので、お子さんと一緒に参加して楽しんでもらえたら嬉しいです。一度参加していただけると、きっと違った世界が見えると思います。

──最後に、子どもと自然体験をするときのコツを教えていただけますか。

小林さん:すべてのこどもに自然を!プロジェクトの特設サイトに、「しぜんみっけアクション」というコンテンツを用意しています。ここで10個のアクションを紹介していますので、ぜひやってみてください。

私のおすすめは、「見つけた生きものにニックネームをつける」です。「生きものに詳しくないから、子どもに名前を聞かれても分からない」という親御さんがいますが、そんなことを気にする必要はありません。今ある名前もどうせ誰かがつけた名前ですから、お子さんに決めてもらえばいいんです。ニックネームをつけるとなると、生きものの特徴を見つけようとするので観察力が鍛えられますし、表現力も磨かれるかなと思います。

櫻井さん:私は「写真をとってみる」を推したいです。ただ散歩するのではなく、「写真をとりにいこう」と言うことで、子どもは「何かないかな~」と探す意識が高まります。ただ歩いているだけでは目に入らないものも見つけやすくなります。とても自然観察をしやすい方法ですし、家に帰ってからも写真を見ながら話ができるのでおすすめです。

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