人と自然がともに生きる社会を 未来へ

サニエルと日本自然保護協会のみなさん

公益財団法人日本自然保護協会とは

日本自然保護協会は、創設から60 年以上の歴史をもつ自然保護団体。生物多様性を守り、自然のしくみを生かした社会づくりを実現するため調査研究や保護活動、環境教育を行い、行政や企業ではできない活動をしている。日本各地の然環境の変化や自然保護問題の情報は全国2 万数千人の会員や支援ネットワークから収集。地域の人々やNGO、研究者、行政と協力し問題解決を目指している。
今回ぼくサニエルが、広報室室長の幸地さんと、自然のちから推進室プログラムオフィサーの大野さんにお話を伺ってきました。

広報室室長の幸地さんと、自然のちから推進室プログラムオフィサーの大野さんにお話を伺ってきました。

人と自然のよりよい関係を目指して

こんにちは、幸地さん、大野さん。日本自然保護協会の活動内容を教えてください。

広報室室長として普及啓発活動をする幸地さん

広報室室長として普及啓発活動をする幸地さん

こんにちは、サニエル。日本自然保護協会は、日本の自然を保護する活動をしている団体なのですが、何をしているのかちょっとわかりづらいですよね。「自然を壊す開発に反対する団体」と思っている方もいるかもしれませんが、それだけではないんですよ。私たちは、「どうしたら人と自然がともに生きる社会をつくっていけるか」ということを考え、行動している団体です。人々の暮らしに必要な自然の恵みを守りながら、地域と自然がお互い損なうことなく一緒にあることでいい効果が生まれるよう、地域の人々や行政と協力しながらさまざまな活動をしています。

たとえば、私たちは日本有数の照葉樹林を守り育てるため「綾の照葉樹林プロジェクト」に取り組んでいます。日本国内の照葉樹林の多くが伐採や開発で消滅している中、宮崎県東諸県郡綾町は唯一約1万ヘクタールもの照葉樹林帯が保たれているエリアです。その貴重な照葉樹林を保護・復元するために、日本自然保護協会は調査研究や保護活動、環境教育などを実施しています。綾の照葉樹林プロジェクトは日本自然保護協会だけでなく、綾町に住む人々や県、九州森林管理局、関連NPO が協働して取り組んでいるプロジェクトです。綾町の人々は昔から自然とともに生きる地域づくりに独自で取り組んでおり、日本の有機農業を牽引する存在。自然にダメージを与えないようにしてつくられた野菜はたいへん人気です。また照葉樹林が残る自然の豊かさを好む陶芸家やクラフト工芸家が数多く移住するなど、地域活性化のモデルにもなっています。私たちは自然環境の視点で、綾町にずっとかかわってきましたが、綾町は豊かな自然を守り、自然を損なうことなく賢く利用する取り組みが評価され、2012 年に(※)ユネスコエコパークに登録されました。綾町のように人と自然がともに生き、地域活性にもなるような事例をもっと生み出していきたいですね。

※正式名称は「生物圏保存地域」。地域の豊かな生態系や生物多様性を保全し、人と自然がともに生きることができる持続可能な社会を実現していると、ユネスコが認定したエリアとして登録承認される

1 万ヘクタールにもおよぶ綾町の照葉樹林帯

1 万ヘクタールにもおよぶ綾町の照葉樹林帯

全国各地の貴重な自然を守るために、戦後まもなく発足

設立の経緯を教えてください。

英語表記の頭文字を取り、通称「NACS-J(ナックス・ ジェイ)」と呼ばれる

英語表記の頭文字を取り、通称「NACS-J(ナックス・ジェイ)」と呼ばれる

戦後まもない1949 年、発電所を建設するために尾瀬ヶ原にダムを開発する計画が持ち上がりました。そのとき、尾瀬ヶ原の自然の貴重さを理解する学者や知識人が「ダムに沈むことで日本の自然資源の大きな損失になる」と反対運動を起こし、「尾瀬保存期成同盟」という団体が設立されました。これが日本自然保護協会のはじまりです。ちょうどその頃、全国各地でさまざまな開発に対する自然への影響が議論され、「日本各地の問題にも対応していかないといけない」となり、1951 年に「日本自然保護協会」と名前を改めました。

当初のメンバーは、自然に理解のある学者や知識人が中心でした。しかし、各地の森や里山、川、海辺の生態系や野生動植物の生息などに関する幅広い活動をしていくことに加え、「自然を守る仲間」をもっと増やそうと「自然観察指導員」というボランティアの登録制度をつくり、これらの中で、地元の方や協力者が徐々に増えてきました。そして現在、「自然観察指導員」は3 万人以上となり、地域での自然保護活動や普及啓発をしてくれる大事なパートナーになっています。2016 年9 月に行われた第11 回サニエルおやこネイチャーツアーでも、新潟県十日町市の自然観察指導員の方にご協力いただきました。

ネイチャーツアーにて子どもたちに水辺の生き物につ いて教える自然観察指導員の南雲さん

ネイチャーツアーにて子どもたちに水辺の生き物について教える自然観察指導員の南雲さん

地域や国・県、企業など多くのパートナーとともに取り組む自然保護活動

具体的にどんな活動をしているのですか?

生物多様性を説明している

私たちは、「調べる」「守る」「広げる」という3つのテーマで活動しています。「調べる」とは調査研究のこと。環境省から受託され全国各地の自然をモニタリングしたり、開発問題に関する調査をしています。

例えば沖縄の辺野古基地の問題。辺野古の海中にはどのような生き物がいてどういう生態系がつくられているのかを職員が科学的データをとり、自然の価値を調べています。「守る」とは保護活動です。開発問題に対して地元の人と一緒に自然を守るキャンペーンを行ったり、メディアに対し問題をわかりやすく伝えたりしています。また、自然が破壊されないように省庁や開発事業者と話し合いを重ねることもあります。私たちはただ自然を守るだけでは意味がないと考えています。自然は守られたけれど地域が衰退してしまっては意味がありません。地域と国(県)、そして私たちが強いパートナーシップをつくり出し、人と自然がともに生きていける道を探していくことに意味があると考えています。

「広げる」とは広報活動です。Web や会報、自然観察指導員の活動などで自然の豊かさや素晴らしさ、環境問題についてわかりやすく伝えるよう心がけています。伝える相手は一般の人だけでなく、行政や企業など多岐にわたります。また今後は特に企業とより深く関わり、一緒に自然保護活動に取り組んでいきたいです。生活のあらゆることに深く関わっている企業とパートナーになることで、よりよい相乗効果が生まれるのではないかと考えています。企業との共同イベントや企業セミナーも継続していきます。

企業との共同イベントを定期的に開催し、自然の素晴 らしさについて伝えている。(写真はサニクリーン主催 「おやこネイチャーツアー」)

企業との共同イベントを定期的に開催し、自然の素晴らしさについて伝えている。(写真はサニクリーン主催「おやこネイチャーツアー」)

自然の豊かさを広め、守り、うまく活用していく

今後の方向性を教えてください。

日本自然保護協会の幸地さんと大野さん

日本自然保護協会は2020 年までの中期目標を掲げています。直接皆さんに関わる目標はおもに3つです。まず1 つ目は「生物多様性が失われるのを食い止め、自然保護の仕組みづくりをする」ことです。生物多様性とは地形や気候が織りなす、その土地ならではの自然環境に応じて多種多様な生き物が生息し、それぞれがかかわり合いながら生きていることです。あらゆる生き物同士がつながっている、その土地特有の生物多様性を壊すことのないよう、私たちは国・自治体・事業者へ働きかけたり意見を交換したりして、豊かな自然を守るための仕組みづくりをしていきたいと考えています。

2 つ目は「生物多様性・自然の力をうまく生かして地域を盛り上げる」ことです。宮崎県綾町のように、地域と自然とがお互い損なうことなく、一緒にあることでいい効果が生まれるモデルを増やしていきます。

3 つ目は「一般の方が自然とふれあう機会をつくり、自然の素晴らしさを知っていただけるよう働きかける」ことです。自然観察のボランティアリーダーである自然観察観察員の協力を得て、多くの方に自然を身近に感じてもらえるような取り組みを今後も継続していきたいです。

ユネスコエコパークに登録された綾町

ユネスコエコパークに登録された綾町

身近にある自然の豊かさに目を向けてみてほしい

最後に、皆さんにメッセージをお願いします。

日本自然保護協会の幸地さんと大野さん

水は汚れたら飲めなくなり、空気は汚れたら病気にかかりやすくなってしまう。毎日食べているものはすべて自然の産物ですし、動植物を見て「癒される」「楽しいな」と思う気持ちも自然があるからこそです。私たちの暮らしが自然の上でしか成り立っていないということは、本来とても当たり前のことなのですが、私たちは忘れてしまっています。まずはそれに気づくことが大切です。気づくか気づかないかというのは、とても大きな違いですから。

また、一日のほんの少しの時間でいいので自然を振り返ることをしてほしいですね。たとえば、道路際の植え込み。よく観察してみると季節ごとに生き物が変わっています。生える植物が変われば、そこにくる虫も変わります。そこでは小さな食物連鎖が行われているんです。都会のどんなに小さな場所でも目を向ければいろんな生態系が見えてきます。周囲の自然に気づくと世界がちょっと変わって見えておもしろいですよ。

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