「親子で学ぶイヌワシin 赤谷の森」ワークショップにいってきました

イヌワシ観察に参加したサニエル

公益財団法人 日本自然保護協会の「イヌワシ観察ワークショップ」とは

地域住民、日本自然保護協会、林野庁関東森林管理局が協働して推進している「赤谷プロジェクト」は、この地域が昔から持つ森林生態を守るための管理をし、未来につなげるプロジェクト。今回はその活動の一つで、小中学生の親子を対象に、イヌワシを観察して、生物の多様性と自然を楽しく伝えることを目的としている。
今回はぼくサニエルも、イヌワシの観察に参加して、日本自然保護協会 赤谷プロジェクト事務局の出島さんにお話を伺ったよ。

日本自然保護協会 赤谷プロジェクト 事務局 出島さん

イヌワシが7年ぶりに子育てに成功

イヌワシ観察の様子

「調査をはじめた1993 年から2009 年までの16年間では、子育てに7 回も成功していたのに、2010 年以降は6 年連続で失敗。一時は赤谷の森の環境悪化が懸念されたのですが、今年は7年ぶりにイヌワシが子育てに成功しました」と語るのは日本自然保護協会の出島誠一さん。

日本全体で見ると、森が減ったことでイヌワシの数は減少している。今回、イヌワシの子がすくすく育っているということは、親が獲物を捕らえ、子どもに餌を与えられている証拠。イヌワシの生息環境は標高の高い場所で、上空を飛んでいるイヌワシが餌である動物の姿を確認できる開けた低草地と、小動物が多く生息できる樹木豊かな森の両方が必要になる。

多様性豊かな森をつくるため管理するという新たな取り組み

イヌワシ観察の様子

日本自然保護協会では、守ってきた自然を多様な生物がすみやすい場所に育み、未来に受け渡
すための活動を行なっている。その一つが「赤谷プロジェクト」である。

赤谷プロジェクトでは、生物多様性の豊かな森を目指して、地域の人たちと林野庁とタッグを
組みながら、人工林の一部を自然林に復元したり、ツキノワグマやテン、リス、シカなどの動
物や、アマガエルやサンショウウオなどの両生類が生息できる環境づくりに取り組んでいる。

地域住民は森との関わり方を模索して、様々なアクションを起こし、林野庁は赤谷の森に適し
た林業のあり方を追求している。皆で一緒に地域のこと、赤谷の森のことを考えていくためには、地道で継続的な各種の観測や調査が重要で、食物連鎖の頂点に立つイヌワシの観測は、森の生態系の豊かさのモノサシになる。

親子で発見!森の生き物や林業と森との関係

赤谷の森

イヌワシ観察ポイントに行くまでの森で、出島さんが様々なレクチャーをしてくれた。「アマガエルは細く流れる湧き水の溜まり場に産卵します。また別の小さな川にはサンショウウオが生息しています。お互い生息地が異なるので、森の中で共存しています。初夏になると森でアマガエルの合唱が聴こえてきますよ(出島さん)」森には暑い夏でも尽きることのない小さな湧き水もあるとか。赤谷の森は林業の森でもある。人が木を植え生活の糧とし、森の手入れを怠らないことで、動物たちが命を育む場所を守ってきた歴史がある。過去から受け継いだ知恵と、森と動物と人とが継続して共存するための知識や技術を融合させて、出島さんたち関係者は赤谷の森を未来につなげようとしている。参加した子どもたちは、はじめて聞く林業と森との関係について耳をすまして聴いていた。「林業のことを知ってもらえたら嬉しいですね。今回の伝えたいことのひとつですから(出島さん)」

イヌワシ親子観測開始!

イヌワシ観察の様子

イヌワシの観察ポイントに着くと午前11 時、ほぼ予定時間。風も穏やかで日が当たるところは小春日和かと思うくらいにポカポカしているのに、雲で太陽が隠れた途端、気温がぐっと下がる。無風状態の天気の日は、上空を滑空する姿は観測されにくいという。「ここからはじっと待つのみです!(出島さん)」の言葉に、それぞれ自由に地面に腰を下ろす。待機している間、出島さんたちから、イヌワシの生態や親子の暮らしぶりを伺った。

「イヌワシは羽を広げると大きいもので約2 メートルもあります。もうきん類の中でもどう猛で、空の王者ともいわれています。ふた回りほど小さいクマタカも捕まえ食べてしまいます。狩りはいつもは夫婦共同で行います。子どもが自由に飛べるようになると、3 羽揃って飛んでいることもあり、親子の会話らしきものを感じさせるときもあります(出島さん)」。

様々なお話を聴きながら、予定時間を延長して粘ったが、残念ながらイヌワシの姿は見られな
かった。

教育用カスタネット発祥の地、森を守る力に

カスタネット工房

下山して向かったのは、赤と青でおなじみの教育用カスタネットを製造して50 年以上の「カスタネット工房」。もとはスペインの民族楽器が原型で、戦後日本の音楽教育で日本の子どもたちが使いやすいように開発・製造された。2 枚の板をゴムでつなぎ、開いた状態が維持できる仕組みをもたせた教育用カスタネットは、ここ、カスタネット工房から生まれて全国に届けられ、今も製造されている。

工場内の機械はすべて創始者である先代がつくり上げたオリジナルだという。当時はカスタネット工場など日本には存在せず、ましてや一つひとつの制作工程に合わせた機械などもなかった。そのため、既成の機械に手を加え改良に改良を重ねてできあがったのが、現在の機械たち。これらの機械は、2 代目の冨澤健一さんが毎日丁寧に手入れし、先代の志と一緒に受け継がれている。

ここで製造されるカスタネットの材料は、赤谷の森から伐採した材木用の木を使用している。カスタネットの製造には、赤谷の森の恩恵を活かし、動植物豊かな森を維持していく一翼となる願いが込められている。

世界に一つだけのカスタネット作り!

カスタネットづくりの様子

見学だけの予定だったが、今回特別に、子どもたちにカスタネットづくりを体験させてもらった。材料となる木の種類も好きなものから選べ、内側のでっぱっている「ポッチ」の色も好きな色にできる、まさに世界にひとつだけのカスタネット。冨澤さんにサポートしてもらいながら、機械を使っての真剣な作業に、子どもたちの瞳が一段と輝いた。工程を踏むことで少しづつ完成されていくカスタネットを手に、お母さんに満足そうな笑顔を向ける女の子や、言葉少なに全身で「楽しい!」を表現する男の子のキラキラした表情、大人たちにとっても楽しい時間となった。

森を歩き、空を見上げて観察。そしてカスタネットづくりまで体験し、自然と人間の営みの関係に対して考え触れた1 日だった。「今回、イヌワシは見られませんでしたが、森の生態系や林業のことなどを知っていただき、関心を持っていただけたら嬉しいです。これからも、イヌワシや赤谷の森を知ることができる楽しい企画をしていきますので、皆さんまたきてください(出島さん)」。

応援している社会貢献団体

TOPICS

BACK NUMBER

hivelocity

google