「自然しらべ2019 アリ博士になろう!観察会&指導者研修会」にいってきました。

イベント参加者とサニエル

「自然しらべ」とは?

「自然しらべ」は、日本自然保護協会(NACS-J)が実施する市民参加型の自然環境調査。毎年、違うテーマを設けて調査をおこなっています。2019年のテーマは、昨年に続いて「アリしらべ」。今回は、ぼくサニエルが「アリしらべ」の一環としておこなわれた観察会&指導者研修会に参加し、日本自然保護協会の高川さんと、日本のアリ研究の第一人者である寺山先生にお話を伺ってきました。

日本自然保護協会の高川さん

日本でも、ヒアリの初期定着がはじまっている。

日本自然保護協会の高川さん

日本自然保護協会の高川さん。

──今年の自然しらべである「アリしらべ」について教えてください。

(高川さん)

自然しらべは、年に1回、私たち日本自然保護協会が「日本の自然の健康診断」のためにおこなっている調査です。昨年(2018年)は、アリを通して日本の自然の現状を把握しようということで「アリしらべ」をおこないました。全国で1,590人もの方にご参加いただき、ご自宅やご近所でアリを見つけて、情報をお送りいただきました。

今年、2年連続でアリしらべをおこなうわけですが、基本的な趣旨は昨年と変わりません。ただ、今年に関してはアリのなかでも外来種の「ヒアリ」にウエイトを置いています。というのも、自然環境に多大な影響を及ぼすと言われるヒアリが、日本に定着する危機がすぐそこまで迫っているからです。

※昨年の「アリしらべ」取材記はこちらからご覧いただけます

──日本におけるヒアリの現状を教えてください。

(寺山先生)

2017年6月に日本で最初にヒアリが見つかってから42ケース目になるのですが、今年(2019年)の7月に東京でヒアリが見つかりました。このケースはこれまでと違って、初めてヒアリが「巣を作った状態」で見つかりました。巣があって幼虫までいるということは、日本でもヒアリの初期定着がはじまっているということで、明らかに年々危険性は増しています。

湾岸部は集中的にモニタリングしていることもあり、幸い発見が早かったのですが、コンテナが内陸部まで運ばれてしまえば発見も遅れます。内陸部でヒアリが定着してしまうと、さらに危険性は高くなります。

ワニよりも強い!?ヒアリの脅威は計り知れない。

「先生、これってヒアリ?」と聞くこども

「先生、これってヒアリ?」子どもたちは観察会でアリ探しに夢中。

──ヒアリが定着することで、どんな脅威がありますか?

(寺山先生)

ヒアリが定着すると、我々の生活環境に直接的な影響が及んできます。生態系が壊れて身近な自然が破壊されるだけでなく、ヒアリに刺されればアナフィラキシーショックによって死に至ることもあります。ですから、ヒアリの巣ができてしまうと、公園や学校も使えなくなってしまいます。

実際に、昔からヒアリの被害に悩まされているアメリカでは、ゴルフ場や学校、公園、教会、海水浴場などが閉鎖に追い込まれる事例は少なくありません。日本もヒアリの定着を許してしまったら、同じ状況になるわけです。危なくて公園にも行けないし、犬の散歩もできません。花見もお墓参りも、花火大会もキャンプもできなくなってしまいます。「刺される」という被害はもちろんですが、刺されなくても巣があるだけで様々な被害が出るのがヒアリの厄介なところです。

──諸外国でもヒアリは猛威を奮っているのでしょうか?

(寺山先生)

アジアだと、中国や台湾はヒアリの駆除に失敗して定着を許してしまっています。アメリカは、ヒアリによる年間の被害総額が6,000億~7,000億円にも上ります。累計ではなく毎年ですから、莫大な被害ですよね。

北米では、ヒアリのせいでワニの数が減っているという報告もあります。ワニの卵がヒアリに攻撃されたり、卵からかえった赤ちゃんワニが集中攻撃を受けたりします。ワニでさえ減るわけですから、他の爬虫類や両生類にも相当な影響が出ているはずです。

ヒアリは赤茶色でいろんなサイズがいる!

寺山先生の講演の様子

寺山先生は日本のアリ研究の第一人者。国内で初めて見つかったヒアリを認定したのも寺山先生だ。

──ヒアリの毒で人間が死んでしまうのは恐ろしいですね・・・

(寺山先生)

ヒアリの毒は、アナフィラキシーショックを引き起こします。ヒアリに刺されても何も起きない方が大半ですが、100人に1人くらいはアレルギー体質の方がいますので、そういった方はアナフィラキシーショックを起こして、最悪の場合、死に至ることもあります。

ススメバチやアシナガバチのハチ毒アレルゲンと、ヒアリのアレルゲンは共通部分があることが分かっています。つまり、ハチ毒アレルギーの方がヒアリに刺されると、アナフィラキシーショックを起こす可能性があると言えます。

ちなみに、日本では年間20名くらいがハチに刺されて亡くなっていますが、ヒアリが定着してしまったら、それと同じ割合で死者が出るってことです。同じ割合と言っても、ヒアリの巣ひとつの中には数万から数十万の働きアリがいますので、個体数で見たらケタが違います。危険度はハチの比ではないのです。

──ヒアリはどのように見分ければいいのでしょうか?

ヒアリは赤茶色をしていますので、まずは色でアタリをつけます。かつ、専門用語で「連続多型」と言うのですが、いろんなサイズの働きアリがいるのが特徴です。サイズは2.5ミリ~6ミリと、小さいものから大きいものまで存在します。ですから、いろんなサイズの赤茶色っぽいアリが行列で歩いていたら、ヒアリ(もしくはアカカミアリ)で間違いないですね。

あと、ヒアリは2~3年経つと富士山型の大きな巣を作ります。こういう巣を作るアリって、日本のアリにはいないんです。だから、巣を見るだけで分かるのですが、逆に巣があるということは定着して2~3年経っているということなので、すでにヒアリが増殖している可能性が高いです。

ヒアリは生活破壊者!絶対に定着させてはいけない。

ヒアリの写真

ヒアリの身体は赤茶糸をしている。

ヒアリの巣の写真

富士山型の巣を作るのもヒアリの特徴。

──ヒアリの定着を防ぐには、どうしたらいいのでしょうか?

(寺山先生)

ヒアリの定着を防ぐためには、なるべく早い段階で発見すること。そして、発見したら徹底的に駆除することが重要です。そのためには、一般市民の協力が欠かせません。

ニュージーランドもヒアリに3度侵入されそうになっていますが、その都度、初期段階での駆除に成功しています。ニュージーランドは、「独自の自然環境を守ろう」という意識の高い国なので、それが幸いして、ヒアリが巣を作っても一般市民の方がすぐに発見して駆除できているわけです。オーストラリアにもヒアリが入り込んでいますが、ヒアリの巣の発見の7割は一般市民からの通報です。

一般市民による早期発見が大事だと申し上げましたが、そのためには知識が必要です。知識がなければヒアリを見過ごしてしまいますが、最低限の知識があれば「見たことないアリがいる・・・」「これって、もしかしてヒアリ?」というように異変に気づけます。気づいて環境省などに連絡すれば、被害を拡大させずに済みます。

ヒアリに関する啓発・啓蒙は私たち専門家の大きな役割ですが、一方で専門家の数なんてたかが知れています。日本には1日に数千というコンテナ・貨物が入ってくるわけで、全部チェックするなんてできません。だから、一般市民のみなさんの「目」が必要なのです。

──ヒアリ以外の外来アリも増えているのでしょうか?

去年のアリしらべの結果からも、今まで日本にいなかった外来アリが定着し、分布を拡大していることが分かりました。少しずつ、地域のアリの様子が変わってきているのは確かです。

ただ、「外来種はみんな敵」というのはちょっと違います。世界中で物資や人が盛んに行き来する今、外来種が入ってくるのは致し方ない面もあります。外来種すべてを駆除するのは不可能だし、そこまで目くじらを立てる必要もありません。

ただ、ヒアリは別です。普通の外来アリはよくても、ヒアリは日本の生態系に大きな影響を与える「侵略的外来アリ」です。一般的な外来アリとはグレードが違って、ヒアリが増えちゃったらもう無敵です。だから、是が非でも定着を防がなければいけません。

市民みんながちょっと関心を持つだけで、ヒアリから生活を守れる。

寺山先生

「外来種をすべて駆除する必要はないが、ヒアリだけは定着を許してはいけない」と言う寺山先生。

──高川さん、最後にメッセージをお願いします。

(高川さん)

我々は、「日本の自然を守る」という大きな目標がありますが、それには一般市民のみなさまの協力が欠かせません。特に、ヒアリに関してはみなさまの力に心から期待したいです。アリに関心を持ってもらい、ヒアリの脅威を知ってもらい、そのうえで「身近な環境を守りたい」と思ってもらえたら嬉しいですね。

今回も、アリしらべの調査データに期待するところが大きいので、ぜひご参加いただき、身近な場所でアリを探していただきたいと思います。

「自然しらべ2019 全国アリしらべ!」は10月31日まで!
https://www.nacsj.or.jp/shirabe/2019/08/16828/

──寺山先生、最後にメッセージをお願いします。

(寺山先生)

日本にも、「史上最悪の外来生物」と言われるヒアリの侵入危機が迫っています。一人でも多くの方がヒアリに興味を持つことで我々の生活が守られることになりますので、みんなでそういった機運を高めていきたいですね。

ヒアリを知るには、日本の普通のアリについても知る必要があります。ですからまずは、身近なアリたちに興味を持ってもらいたいです。身近な生き物であるアリに対する関心から、まわりの自然へと興味を広げていただければと思います。

「自然しらべ2019 アリ博士になろう!観察会&指導者研修会」 参加者のご感想

集合写真

アリの観察会は無事に終了。お子さんの引率で来た親御さんも童心に返ってアリ探しを楽しみました!

──保護者の方の感想

・ヒアリの危険な面を、今まで聞いていたのとは違う面からも理解できて良かったです。(40代女性/神奈川県)

・侵略的外来アリの繁殖を阻止する為には一般市民による発見が重要とのことでしたので、今回学んだことを参考に、使命感を持って目を光らせていけたらと思います。(30代女性/東京都)

・子どもと一緒に一度じっくりアリ観察をしてみたいと思います。(40代女性/東京都)

──子どもたちの感想

・ぼくがとくに知ることができてよかったと思ったのはヒアリの巣のとくちょうです。理由はヒアリの巣は、ふじさん形になっていたからです。(男子小学生/東京都)

・いろんなアリがいて、クロヤマアリの女王を見つけたのがうれしいです。(男子小学生/神奈川県)

・今日アリのしゅるいやアリさがしがとてもたのしかったです。またきたいです!(男子小学生/神奈川県)

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