副業は、「できること」ではなく「やりたいこと」を。 2枚目の名刺を持って、自分らしく社会と関わる。

廣さんとサニエル

NPO法人 二枚目の名刺とは?

NPO法人 二枚目の名刺は、本業で持つ名刺のほかに、自分を社会に活かすために持つ名刺を「2枚目の名刺」と位置づけ、多くの人に2枚目の名刺を持つ生き方を提案するとともに、2枚目の名刺を持つきっかけを届けるプロジェクト(サポートプロジェクト)を立ち上げています。2009年の発足以来、100件超のサポートプロジェクトを立ち上げ、プロジェクトに参加した社会人は600名以上に上ります。今回は、ぼくサニエルが二枚目の名刺の代表を務める廣さんにお話を伺ってきました。

代表の廣さん

自分の専門分野でなくても、できることは意外とある。

代表の廣さん

NPO法人 二枚目の名刺 代表の廣さん。

──「二枚目の名刺」発足のきっかけを教えてください。

10年ほど前、僕は金融業界で働いていたのですが、会社に所属しながら1年間留学した際、ベトナムで農作物の輸出促進に関わるプロジェクトに従事しました。この1年間の農業プロジェクトから、すごく大きな学びを得たんです。会社の名刺を使わずに、自分でプロジェクトを立ち上げて、自分の名前で勝負した経験。失敗もたくさん経験しましたが、それまでなかった刺激と出会いがあったんです。同時に、「自分の専門分野でなくてもチャレンジしてみたらできることって意外とあるんだな」と実感した経験でもありました。

社会で起きていることに目を向けてみる。そのなかで自分ができることをやってみる。それが社会の変化につながり、さらに自分自身の変化にもつながる。このベトナムでの経験が原体験となり、NPO法人 二枚目の名刺を立ち上げることになったのです。

──事業コンセプトと主な活動内容を教えてください。

僕たちは、本業で持つ名刺のほかに、自分を社会に活かすために本業とは別の活動・仕事に取り組む名刺を2枚目の名刺と位置づけています。「こんな社会になったらいいな」を実現するために、今いる組織や立場を越えて2枚目の名刺を持って活動する。そんなスタイルが当たり前になることを目指しています。

活動の柱になっているのは、より多くの社会人に2枚目の名刺を持つきっかけを届ける「サポートプロジェクト」です。たとえば、社会課題に対峙しているNPOの多くは、広報戦略や資金調達、業務を支える体制など様々な課題を抱えています。このようなNPOをはじめとする組織・団体を、社会人がチームを組んで後押しするのがサポートプロジェクトです。

2枚目の名刺で、やりたいことに挑戦する。

サポートプロジェクトの説明会の様子

サポートプロジェクトの説明会。NPOなどの団体が事業内容や想いを語り、共感した社会人が手を挙げる。

──サポートプロジェクトはどういう流れで進むのでしょうか?

3つほどの団体と30~40人ほどの社会人を招いて、サポートプロジェクトの説明会をおこなうことからスタートします。この説明会では、NPOをはじめとする団体のリーダーに事業内容や想いを語ってもらいます。それに共感した社会人が手を挙げて、5~6人でチームを組み、3ヶ月の期間限定で団体の事業推進に取り組んでいくという流れです。

──サポートプロジェクトの参加者は報酬を得るのでしょうか?

いろんな考え方がありますが、参加する社会人は基本的に無償にしています。僕は、「お金をもらわないからこそできる挑戦」ってあると思っています。当たり前かもしれませんが、人ってお金をもらうと、自分が「できること」をやらなきゃいけなくなるんです。でも、せっかく2枚目の名刺を持つなら、できることをやるのではなく、「やりたいこと」に挑戦してほしい。その意味でも、中途半端に報酬を出すことはしていません。

「自分らしい社会との関わり方」を探るママたちが増えている。

サポートプロジェクトの様子

最近のサポートプロジェクトは、ママ・主婦層の参加も目立つように。

──サポートプロジェクトの参加者はどんな方が多いですか?

業種や職種に傾向はありませんが、発足した当初は25~35歳くらいの方が中心でした。「ひと通り仕事は覚えたけど、社内ではなかなか出番が回ってこないから外でチャレンジしてみよう」といった方たちが多かったですね。

5年くらい前からはミドル層が増えてきました。45~55歳くらいで、引退が視野に入りはじめた層ですね。「自分は引退したらどうするのか?」「社会に対してどんな還元ができるのか?」といったことを考えはじめる方たちです。

ここ1~2年の傾向としては、ママたちが増えているなという印象です。彼女たちは、子育てに関する問題を目の当たりにしているので、そのあたりで何とかしたいという気持ちがあると思います。ただ、必ずしもそれだけではなく、「もっと自分らしい社会との関わり方を探る」といった動機があるようにも感じます。

サポートプロジェクトに参加する方って、「自分のためだけに」という方はほとんどいません。同時に、「社会のためだけに」という方もいないように思います。社会貢献と言うと抵抗があるけど、自己研鑽(じこけんさん)だと割り切るわけでもない。もっと柔軟で、しなやかなんです。

──サポートプロジェクトの参加者からはどんな感想をもらいますか?

本業では経験できないことを経験できたり、本業では出会えない人に出会えたりするので、「視野が広がる」とか、「自分の強みを再確認できる」といった感想をいただくことが多いです。

うれしいのは、自分の会社にサポートプロジェクトの仕組みを持ち帰ってくれる参加者がいることです。自社で、「同僚や部下、そして上司にサポートプロジェクトを経験させたい」と自主的に取り組みを開始したり、社内の制度にしたり。ある人材系の会社では、サポートの対象を社内他部署として2枚目の名刺を発展させ、「社内副業制度」を創った方もいましたね。

サポートプロジェクトは、社会人が会社の中では学べないことを学べる「越境学習」の場でもあるんです。バックグラウンドが異なる人たちが集まり、そこで様々な価値観に触れたり、自社でのやり方とは違った仕事のやり方を学んだりできます。社内では失敗を恐れてできないことも、会社の外でなら失敗を恐れずにチャレンジできますしね。サポートプロジェクトにはこのような側面があるので、人材育成のために社員を送り出してくれる企業さんもあります。外で貴重な学びを得た社員がその経験を持ち帰り、社内でイノベーションを起こしてくれれば、企業としては大きなメリットになりますから。

──約10年の活動を振り返ってみて、手応えを感じるところはありますか?

立ち上げた10年前に比べると、「社外で何かすること」への風当たりは随分ゆるやかになりましたし、会社員だけでない2枚目の名刺の持ち方も出てきていて、2枚目の名刺を持つことが当たり前の選択肢になりつつあるという感触はあります。

「働き方改革」や「副業・兼業解禁」といった流れが後押しとなったと思いますし、これからは「SDGs」をテーマに一人ひとりがどのように社会課題に向き合うのかが問われるようになり、こうしたうねりはさらに大きくなっていくと思っています。

地域を越え、世代を越え、どんどん遠くへ越境したい。

子どもを主体にした「ソーシャルキッズ・アクション・プロジェクト」でのプレゼンの様子。

子どもを主体にした「ソーシャルキッズ・アクション・プロジェクト」でのプレゼンの様子。

──近年、力を入れている活動はありますか?

越境学習のお話をしましたが、最近は様々な形で「境界を越える」活動を生み出していますし、今後もそうしていきたいと思っています。「地域」を越えた取り組みもしており、今年はついに海外(インドネシア)でもプロジェクトをおこないました。

「世代」を越えるという点では、子どもを主体にした「ソーシャルキッズ・アクション・プロジェクト(SKAP)」という活動もおこなっています。これは簡単に言うと、小学生が街の課題を見つけてきて、「街をこうしたい」って(渋谷)区長にプレゼンするんです。その後、プロジェクトを実現に向けて動かしていくところまで、子どもたちが本気で取り組み、同時に周囲の大人も子どもたちの取り組みを本気で受け止め支援していく、そんな活動です。

子どものお遊戯だと思われるかもしれませんが、子どものほうがよっぽど枠を外して自由に考えていて、驚かされることばかりでした。SKAPには様々な企業やNPO、商店街などが協賛していますが、大人たちも、街づくりに「将来の街の主役」の意見を反映させたいという気持ちがあります。子どもが中心にいると、みんな未来を感じられるんでしょうね。

──今日は、公務員向けのイベントがあると伺いました。

今年の大きなトピックスとして「公務員の副業解禁」があります。僕たちも「公務員 ✕ 2枚目の名刺プロジェクト」を立ち上げて、公務員が2枚目の名刺を持つことを後押ししています。今日のイベントは、「公務員が役所の外に出てどんなことができるのか?」ということを考えたり、「先行して動いている公務員がどんな活動をしているのか?」といった情報を共有したりする場ですね。

2枚目の名刺は、いろんな持ち方があっていい。

廣さんとサニエル

公務員の方々と、2枚目の名刺を持つことについて語るイベントにて。

──2枚目の名刺を持つことに関心のある方たちへメッセージをお願いします。

難しく考えず、ぜひ一回、2枚目の名刺を持ってみてほしいと思います。「やりたいことが分からない」という話も耳にしますが、一回持ってみたら必ず変化があります。変化があったときに、「さて、自分は何をしたいんだろう?」って、あらためて考えればいいんです。

ともすると、「スキルや知識を活かして社会貢献しましょう」という、いわゆる「プロボノ」に見えるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。新しい視点だったり価値観だったり、その人が関わることで必ずその人でなければ生み出せない価値が生まれると思っています。

また、僕たちはボランティアを推進しているように見えるかもしれませんが、社会貢献だけを狙ってやっているわけではありません。社会に目を向けるというのは重要な要素ではありますが、同時に「自分に変化が訪れる」ということも大事にしたいと考えています。むしろ、その両方を追う取り組みに挑戦したいですよね。

2枚目の名刺を持ってみたら見えてくる世界があり、持ってみたら変わった自分がそこにいる。そのくらい自然体でいたほうが、実はすごく無理なく社会と関わっていけるのかなと。2枚目の名刺って、いろんな持ち方があっていい。だから、そんなに肩肘張らずに2枚目の名刺を持ってほしいですね。

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