見えない世界で、音だけを頼りに球を投げ、球を止めるゴールボール。
ゴールボールとはどんな競技ですか?
ゴールボールは、目隠し(アイシェード)をした選手同士が鈴の入ったボールを転がし、相手のゴールに入れる得点を競う障がい者スポーツです。ゴールを入れたら1点というのはサッカーなどと同じ仕組み。コートはバレーボールと同じ広さ。ボールはバスケットボールとほぼ同じサイズですが、2倍くらいの重さがあります。人数は3対3で、試合は12分ハーフの前後半でおこないます。
そもそも、ゴールボールは第二次世界大戦で視覚障がいを負った軍人さんのリハビリのために考案されたスポーツで、視覚を使わずにプレーするのが最大の特徴です。たとえば、車いすテニスや車いすバスケも障がい者スポーツですが、いずれも健常者がおこなう一般競技があります。一方で、ゴールボールは障がい者スポーツ独自の競技で一般競技にはありません。
日本ゴールボール協会が発足した経緯や理念を教えてください。
1994年に、「フェスピック」というアジア・太平洋地域の障がい者スポーツ大会に、日本がゴールボールチームを派遣することになりました。それがきっかけとなって発足したのが日本ゴールボール協会です。
我々は、ゴールボールという競技を広く認知してもらい、仲間(選手・スタッフ)を増やしていくことを目指して活動しています。その先には、「人々がゴールボールを通して障がいの有無を越えて交流しあうことで、共生社会の実現に貢献する」という大きな理念があります。
ゴールボールをプレーする良さはどんなところにあると思いますか?
視覚障がい者の方は日々、見えない状況のなかで多くの不安を抱えながら生活しています。そのような不安を軽減するには、聞いたり、触れたり、感じ取ったりすることで、いかに視力を「代替え」できるかが重要です。ゴールボールを通して、「ここまで代替えできるんだ」ということを知ってもらい、それによって日常の行動を少しでも広げてもらえたらと思っています。
また、アイシェードをつければ、晴眼者の方もゴールボールをプレーできます。視覚を使わないゴールボールは、普段見えている世界で暮らしている方からすると想像もつかない競技だと思います。ゴールボールを通して、見えない世界を知ってもらいたいですし、見えない世界でどうしたらうまくプレーできるのかを考えたり、感じたりしてもらいたいですね。
選手を強化し、競技を普及させるのがゴールボール協会のミッション。
協会の活動内容について教えてください。
我々の活動内容は、大きく「強化」「普及」「大会運営」の3つがあります。
「強化」は、地域大会や世界選手権などの目標に向けた強化合宿など、代表選手を育成し、チームを強くするためのすべての取り組みです。
「普及」は、ゴールボールの認知度を上げるための活動で、メインに据えているのが体験会や講演会です。ゴールボールの認知度はまだまだ低いと感じています。「名前は聞いたことあるけど、どんな競技なのかは知らない」という方も多いと思いますので、もっと認知度を上げていきたいですね。
「大会運営」は、今回のアジアパシフィック選手権などの大会を円滑に進めることです。会場・日程・スタッフなどはもちろんですが、大会を開催するには競技規則に精通した審判も欠かせません。まだまだ人数が不足しているので、審判養成も今後の課題の一つです。
体験会について教えてください。
今おこなっている体験会は、視覚障がい者向けというより晴眼者向けの体験会です。企業様にも多く参加していただいていますし、学校からお申し込みをいただくことも増えています。多くの場合、前半で競技のレクチャーをして、後半でゲーム形式の体験をしていただきます。
学校は、小学校が一番多いでしょうか。小学生の新鮮な反応はすごく分かりやすいですよね。まず、アイシェードをつけた瞬間に、「わっ!全然見えない!」っていう驚きがあります。選手を連れていく体験会では、コート内を自由自在に動き回ってプレーする姿を見て、「すごい!」「見えてないのに何で!?」っていう反応をしてくれます。
企業の社員さんは、事前にゴールボールについて調べてイメージを作ってきてくれる方も多いです。アイシェードをつけて動くときはみなさん戸惑われますが、見えないことを受け入れたら、意外と落ち着いてゲーム形式でプレーできるようになります。
大人も子どもも、ゴールボールの重いボールに慣れるのには苦労しますね。特に、ディフェンスでボールを受けるときです。お腹で受けると「ドスン」と衝撃がくるので腰が引けますし、顔の近くに来るとやはり恐怖感を覚えます。それでも、視力を使えない世界で投げたり受けたりできるようになると、徐々に楽しめるようになってきます。「見えなくてもできる」という喜びを感じていただけたら嬉しいですね。
アイシェードをつければ、視覚障がい者も晴眼者も同じ土俵で戦える。
樫さんがゴールボール協会に入ったきっかけを教えてください。
私は以前、京都にある中途失明者の更生施設で働いていました。視覚障がい者のスポーツ(球技)と言えば「グランドソフトボール」「フロアバレーボール」「サウンドテーブルテニス」の3つが主流で、それ以外はほとんどありませんでしたが、94年前後にゴールボールが入ってきました。そのときに、関係者からゴールボールの話を聞いたのがきっかけですね。
面白そうだなと思って、当時、グランドソフトボールをやっていたメンバーに「ゴールボールをやってみよう」と声をかけたのが最初の取り組みでした。
これまでの協会の活動を振り返ってみていかがですか。
日本ゴールボール協会は1994年に発足しましたが、法人になったのは2015年です。その間はずっと、任意団体として活動を続けてきました。運営メンバーも本業を持つ傍ら、週末や祝日などの限られた時間のなかで活動を進めてきました。
この25年を振り返ってみて良かったことは、ゴールボールという競技を通して多くの人に出会えたことでしょうか。そのなかで絆が深くなった人たちと、今こうして国際大会を運営できているのは感慨深いものがありますね。
今後はどんなことに力を入れていきたいですか?
先ほども申し上げたとおり、ゴールボールはまだまだ認知度の低いスポーツです。やはり、普及活動には一層力を入れていきたいですね。地域ごとにクラブチームができたり、地域ごとに新しい大会が生まれたりして、全国的にゴールボールが盛んになっていくのが理想です。
そのために何をしたらいいのか?というのは難しい話ですが、少なくとも、視覚障がい者の方をあちこちから集めて「ゴールボールをやりませんか?」という話ではありません。パラスポーツは、柔道もあれば水泳もあり、卓球もあればサッカーもある。いろんな競技同士で、選手の取り合いをするのはちょっと違います。
私は、晴眼者の参加が重要になってくると思っています。たとえば、車いすバスケで健常者が車いすに乗ってプレーしているように、健常者と同じフィールドで同じ競技としてプレーする取り組みですね。ゴールボールもアイシェードをつければ、視覚障がい者と晴眼者が同じ土俵で戦えるわけで、そのあたりを今後はもっとPRしていきたいなと。晴眼者も込みでゴールボール人口を増やしていくことを主眼に置いて、普及に努めていきたいです。
多くの方にゴールボールを知ってほしいし、見えない世界を体験してほしい。
最後にメッセージをお願いします。
ゴールボールに興味を持っていただけたら、試合を見るだけでなく、ぜひ体験してもらいたいですね。「見えないなかでどうやるの?」というのを実感してほしいなと。企業・学校からの体験会申込みは随時受け付けていますので、お気軽にご参加ください。
視覚障がいをお持ちの方へメッセージをお願いします。
競技スポーツは「円すい型」や「ピラミッド型」と言われるように、競技性を追求するため、ひと握りのプレイヤーしか頂点を極めることができません。ゴールボールをはじめとする障がい者スポーツも同じように考えられますが、対象者が健常者の数に及ばない点、私は「円柱型」に近くなるのが理想だと考えています。日本代表でも30代・40代の選手が活躍しているように年齢を重ねても競技を継続していけますし、それが理想だと思います。ゴールボールに興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお声がけください。
また、ゴールボールで世界に挑みたい!という方がいれば大歓迎です。当然、代表クラスになってくるとシビアです。日常生活も制限されますし、様々な犠牲を払うことになるでしょう。それでも、チャレンジしたいという覚悟があるなら、我々は全力でサポートします。
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ご支援、その他のお問合わせはこちらで受付けております
一般社団法人日本ゴールボール協会 ホームページ:http://www.jgba.jp/
電話番号:03-5849-3982
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