十分な食事をとれず、健康が損なわれている困窮家庭がある。

──困窮子育て家庭の現状について教えていただけますか。
高砂さん:
キッズドアが先日実施したアンケート調査では、困窮子育て家庭が直面する深刻な実態があらためて浮き彫りになりました。ポイントになる部分を簡単にご説明します。
今回の調査は、キッズドアが支援している困窮子育て家庭(ファミリーサポート登録世帯)を対象に実施し、1,924世帯にご回答をいただきました。その大半は母子世帯で、パート・アルバイトなど非正規雇用で働いており、約8割は所得が300万円未満の世帯です。
まず、全体の99%が「コロナ禍以降、経済的に苦しい状況が続いていると感じている」と回答しています。また、「子育て家庭の中でも生活が苦しい方だと思うか?」という設問に対しては、約6割が「とてもそう思う」と回答しています。
今回の調査では、世帯所得が300万円~600万円の一般世帯にも物価高騰の影響を聞いていますが、困窮子育て家庭との間には大きな差があることが分かりました。物価高騰の影響として「保護者の食事が減ったり、栄養バランスが悪化している」を選んだのは、一般世帯の11%に対し、困窮子育て家庭は75%に上ります。「電気やガスの利用を控えている」を選んだのは、一般世帯の22%に対し、困窮子育て家庭は74%に上ります。

https://kidsdoor.net/data/media/reports/251210_winter_report_summary.pdf
また、年末年始に向けて家庭で用意するものを尋ねた結果、「お正月のお餅や年越しそば」「クリスマスケーキ」「クリスマスやお正月の特別なごちそう」「子どもへのクリスマスプレゼント」「子どもへのお年玉」の5項目すべてで、「必要だと思うが、用意することが経済的に難しい」が最多であり、「用意する予定である」を大きく上回っています。6割を超える困窮子育て家庭では、こうしたものを用意することができません。 「用意する予定である」と答えた家庭も経済的に苦しい状況に変わりはないため、少し無理をしてでも年末年始のイベントのために追加費用を工面する必要があります。費用を工面する手段としては、「貯金を崩す」(50%)との回答が最も多く、「保護者の仕事を増やす(シフトを増やす、副業や単発のアルバイトをするなど)」(31%)が続いています。「その月の家計から工面できる」家庭は1割に満たず、大多数の家庭で、普段の家計以外からのお金の工面が必要な状況となっています 。

https://kidsdoor.net/data/media/reports/251210_winter_report_summary.pdf
また、政府の取組について尋ねた結果、85%が「物価高騰に対して、政府の困窮子育て家庭への支援の取組が十分ではない」と考えていることが分かりました。
──今回の調査結果をどのように捉えていますか。
高砂さん:
3年ほど前から継続的にアンケートを実施していますが、困窮状態が改善する気配が見られないことが最大の問題だと思っています。今回の結果で特に深刻に捉えているのは、十分な食事ができず、親子の健康状態にまで悪影響が及んでいる家庭があるという事実です。アンケートでは、37%が「保護者の健康状態が悪くなった」と回答しており、13%が「子どもの健康状態が悪くなった」と回答しています。フリーコメントでも、「2人育てていますが、2人とも低身長で、通院するほどです」「貧血状態が続いていますが、病院に行ったら薬をもらい続けることになると思うので、なかなか病院にも行けません」など、切実な声が届いています。
十分な食事をはじめ、各家庭の状況に応じて少しでも安定した生活を整えるためには、お金が必要です。アンケートでも、政府に「現金給付」を求める人が72%に上っています。物価高対応子育て応援手当の支給が決定されましたが、一律で2万円を支給したところで状況は変わらないでしょう。先ほどのデータが示すように、物価高による生活への影響度合いは所得レベルによって大きく異なります。だからこそ、困窮子育て家庭にはプラスアルファの支援が欠かせないと痛感しています。
また、児童扶養手当制度が抱える「矛盾」も大きな問題だと認識しています。「働いて収入を増やしたい」と考える保護者が増えているのが、ここ数年の傾向ではありますが、同時に「児童扶養手当に所得制限があるので、働くほど手当が減り、手取りがかえって少なくなる」という悩みも聞こえてきます。実際に「年収が増えたことで、児童扶養手当が減額された」というケースもあります。子どもの食事や学び、体験のためにもっと働いて稼ぎたい──その気持ちが報われない現状は残念でなりません。
おそばやお餅を食べながら、家族で温かい年末年始を過ごしてほしい。

──「2025年 冬の食料支援」について教えていただけますか。
池上さん:
キッズドアでは、毎年夏と冬に大規模な食料支援を実施しています。今回の食料支援では、約7,000円(送料・梱包料含む)分の食品を3,000世帯にお送りする予定です。
冬休みを過ぎると、子どもの新入学を控えたご家庭では、制服代をはじめとする進学費用が大きな負担としてのしかかってきます。そのため、昨年の冬の食料支援は、年長さん、小学6年生、中学3年生、高校3年生の子どもがいるご家庭(約1,700世帯)を対象に実施しました。ですが、今年はさらにどのご家庭も生活が厳しくなり、食料支援を求める声が例年以上に多く寄せられていたため、対象世帯の制限は設けずに募集をしました。合計で3,759世帯からご応募をいただきましたが、今回は3,000世帯分を想定したご用意でしたので、現時点ではやむを得ずまずは抽選という形をとらせていただいています。
──具体的にどのような食品を送るのでしょうか。
池上さん:
キッズドアでは、毎年夏と冬に大規模な食料支援を実施しています。今回の食料支援では、約7,000円(送料・梱包料含む)分の食品を3,000世帯にお送りする予定です。
冬休みを過ぎると、子どもの新入学を控えたご家庭では、制服代をはじめとする進学費用が大きな負担としてのしかかってきます。そのため、昨年の冬の食料支援は、年長さん、小学6年生、中学3年生、高校3年生の子どもがいるご家庭(約1,700世帯)を対象に実施しました。ですが、今年はさらにどのご家庭も生活が厳しくなり、食料支援を求める声が例年以上に多く寄せられていたため、対象世帯の制限は設けずに募集をしました。合計で3,759世帯からご応募をいただきましたが、今回は3,000世帯分を想定したご用意でしたので、現時点ではやむを得ずまずは抽選という形をとらせていただいています。
──具体的にどのような食品を送るのでしょうか。
池上さん:
全世帯に共通でお送りするのは、お米(5kg)、おそば、お餅、そうめん、飲料、お菓子です。おそばやお餅は、昨年も「季節感を感じられる」「年末年始をお祝いできる」と好評だったため、ご家庭で用意しづらい場合でも年末年始の楽しみを感じていただけるよう、今年もお送りします。お米も毎回お送りしていますが、今年はかなり価格が高騰しています。そのぶん、お米以外の食品は昨年より減ってしまいました。
一方で、支援企業様からお菓子やシリアル、防災備蓄食やインスタントのお豆腐、パウチタイプの飲料などをご寄付いただきました。私たちが購入した食品に、ご寄付いただいたものを組み合わせて、合計で10点程度をお届けします。

──食料支援には、キッズドアのみなさんのどのような思いが込められていますか。
池上さん:
私たちとしては、年末年始を家族で温かく過ごしてほしいという思いがあります。年内には届くように発送しますので、年越しにおそばを食べたり、お正月にお餅を食べたりして温まっていただきたいですね。
先ほど高砂から、制度的な問題もあり、頑張って働いてもなかなか生活が楽にならないという話がありました。物価高騰のなか、必死に頑張っている方がたくさんいらっしゃるのを私たちは知っています。だからこそ、その頑張りが途切れてしまわないよう、食料支援が少しでも力になればと願っています。お送りするのは食べ物ですが、私たちの思いも一緒に受け取っていただき、前に進む支えにしていただけたら嬉しいです。
<2025 冬の食料支援 クラウドファンディングはこちら>

──食料支援の取り組みには、どのような課題を感じていらっしゃいますか。
渥美さん:
支援企業様も増えており、お金でご支援いただくほか、スニーカーやおもちゃなどの物品をご寄付いただくケースもあります。多くの企業様のサポートをいただきながら、私たちは夏・冬の食料支援だけでなく、通年で様々な物資支援をおこなっています。
一方で、キッズドアの活動に共感していただいたものの、社内稟議が通らなかったり、特定の団体だけを支援することが難しかったりと、様々なハードルがあるのも事実です。「支援したい」という思いを寄せていただきながらも、具体的な取り組みに結びつかないケースも少なくありません。そこはすごく歯がゆいところですし、難しいところだと感じています。
送料や梱包料などコストの負担も課題の一つです。キッズドアの食料・物資支援は、拠点を設けて「欲しい人は取りにきてください」というやり方ではありません。支援を希望する方々は全国各地にお住まいで、ダブルワークなどで忙しくされている方ばかりなので、交通費と時間を使って取りにきてもらうのは現実的ではありません。私たちの食料・物資支援は「届ける」ことにこだわっており、「お家に届くこと」が重要な価値だと考えています。
加えて、「後ろ指を指されない」形で支援することを大切にしています。たとえば、「あのお家、苦しいのかな」と思われてしまうことが恐くて、フードパントリーや子ども食堂に出入りしづらいといった声もあります。その点、キッズドアの物資は自宅に届き、ダンボールにも「キッズドア」「支援物資」といった記載はありません。ネットショップで買ったものと同じように受け取れます。
一方で、配送という形をとる以上、送料や梱包料の負担は避けられません。こうした費用も年々増加するなか、今年から企業の皆様に、社員ボランティアとして梱包作業の一部をお手伝いいただく取り組みを始めました。コスト削減につながるだけでなく、企業の方々に困窮家庭の現状を知っていただく機会にもなっており、非常に意義深い取り組みだと感じています。
利用者様・企業様とWin-Winの関係を築き、一緒に社会を変えていきたい。

──キッズドアに興味をお持ちの企業様向けにメッセージをいただけますか。
渥美さん:
「子どもを支援したい」という企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせいただければと思います。
企業様の活動趣旨にも合い、困窮子育て家庭の方々も喜んでくれる──キッズドアはそのハブとなり、「三方良し」の関係を築いていきたいと考えています。そうでないと、サステナブルに支援を続けることはできません。
たとえば、賞味期限はまだ残っているけど、市場に出せない商品。終了したキャンペーン情報がパッケージに印刷されている商品。ハロウィン仕様の売れ残り商品や、お中元・お歳暮の売れ残りで翌年までもたないもの。こうした余剰在庫の扱いに苦慮している企業様は意外と多いと伺っています。私たちがそれらを引き受けることができれば、食品ロスの削減にも貢献できます。もちろん今の時点で何でも受け入れられるわけではなく、「どうやって運搬するのか」「そのコストは誰が負担するのか」といった課題もまだまだ残っていますが、こうした課題をうまく調整しながら、Win-Winの関係性で様々な問題解決につなげていければと考えています。
──最後に、困窮子育て家庭向けにメッセージをお願いします。
渥美さん:
まずこの冬に食料支援をお届けできたご家庭には上手く役立てていただき、少しでも温かい年末年始を子どもたちと過ごしてもらいたいです。残念ながらこのタイミングでお届けできないご家庭についても、それ以外の支援に関わる情報は随時配信していますので、引き続きご確認をいただければと思います。
また今回のアンケート調査のように、ご家庭の側から現在の課題を伝えていただく機会も定期的に設けていますので、ぜひご協力いただきたいです。こうした実際の声を、行政への政策提言や社会への情報発信という形で伝えていくことも、私たちの役目だと思っています。
キッズドア・ファミリーサポートは、常時ご家庭からの登録申込を受け付けています。実際にお届けできる支援に限りはありますが、孤立せずに繋がっていることで支えられることがあります。必要とする方々に情報が行き届き、またご家庭からも声を寄せていただくことで、子どもたちを取り巻く社会課題の解決を、一緒に進めていければとても嬉しいです。
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ご支援、その他のお問い合わせはこちらで受け付けております。
認定NPO法人 キッズドア
ホームページ:https://kidsdoor.net/
電話番号:03-5244-9990
住所:東京都中央区新川2-16-10 プライムアーバン新川2階
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