スポーツボランティア文化の醸成を目指して。
――日本スポーツボランティアネットワーク(JSVN)の活動について教えてください。
<藤綱さん>
私たちは、スポーツボランティア文化の普及・醸成を図ることを目的に活動している団体で、3つの事業を柱としています。
まず、「スポーツボランティア養成事業」で、これは文字どおり、スポーツボランティアを養成するための事業です。スポーツボランティアのやりがいや楽しみ方を知る研修会から、ボランティアのまとめ役を務めるための知識を学べる研修会、ボランティア組織の運営をサポートするための知識を学べる研修会まで4つのステップアップ方式となっており、全国で年間70回程度、開催しています。
次に、「コーディネート事業」があります。これは、ボランティアを必要とする団体とボランティア活動をしたい人をつなぐマッチングの事業です。私たちは、「スポボラ.net」というポータルサイトを運営しているのですが、コーディネートはこのサイト上でも行っています。
もう一つの「スポーツボランティア周知・啓発事業」では、研修会とは違った角度からスポーツボランティアについて考える場を設けています。1月27日には「スポーツボランティアサミット2017」を開催し、「誰もがスポーツを楽しむ共生社会に向けて~障害者スポーツのボランティア~」をテーマに、基調講演やパネルディスカッションを行いました。サミット以外にも年に6回、公開講座を開催して、スポーツボランティア活動の認知拡大に努めています。
イベント主催者は、もっとボランティアに頼っていい。
――日本のスポーツボランティアの現状について教えてください。
<榊原さん>
笹川スポーツ財団が行ったアンケート調査によると、日本においてスポーツボランティアを行った人の割合は25年ほど前と比べてほぼ横ばいという結果が出ています。ただ、このデータを真に受けることはできないかなと思っています。なぜなら、日本ではまだまだスポーツボランティアについての正しい認識が広まってないからです。
ボランティアの3原則は、「自主性」「無償性」「公益性」です。たとえば、自分の子どもが地域のサッカークラブに所属しているとしましょう。その場合、父兄が交代で子どもたちを練習場へ送迎したりしますよね。これは、自分でしようと思ってする自主的な活動ですし、お金をもらうわけでもないので無償性もあります。公益性が微妙ですが、仮に自分の子どもが風邪で練習を休んでも、約束だから送迎はすると思います。クラブの子どもたち全体に対しての活動なので、公益性もあると言えるでしょう。つまり、これって立派なボランティア活動なんですよね。でも、この活動をボランティアだと思っている日本人は少ないのが現状です。
スポーツに限らずボランティア全般に言えることですが、日本人は地域の活動などに参加しても「ボランティア活動をしている」という認識が薄いんです。一方で、アメリカなどはボランティア精神や寄付文化が根付いているので、「ボランティア活動をしよう」という意識で取り組んでいます。
こういった事情を鑑みると、データ上の割合は変わっていないかもしれませんが、実質的にスポーツボランティア活動に携わっている日本人は増えていると思っています。
――今後、さらにスポーツボランティアを普及させていくために何が重要だとお考えですか?
<榊原さん>
ボランティア活動をする側にも、イベントを運営する側にも、スポーツボランティアについての正しい認識を持ってもらうことが重要だと思います。特に、スポーツイベントを運営する側ですね。運営スタッフは父兄などの関係者で何とかするものだと思っている主催者がほとんどですが、そういった方にこそ、「外部のボランティアに頼んでいいんだよ」ということを知ってもらいたいです。
日本の場合、たとえば高校生の大会では1年生・2年生が運営役に回るといったケースが多く見られます。別に悪いことではありませんが、やはり地域の人たちや外部の人たちを交えて運営したほうが、そのスポーツの発展にも貢献できるし、地域のコミュニティづくりにもつながるはずなんです。たとえ地域の小さな大会でも、ボランティアを活用するのが当たり前になったらいいなと思いますね。
ライフワークの一つとして、身近なところからスポーツボランティアを。
――研修会の講師を務めるにあたって、どんなことを心がけていますか?
<榊原さん>
スポーツボランティアって基本的に楽しんでやるものですから、楽しさを伝えることはもっとも重視しています。あとは、「何のためのボランティアなのか」ということですね。ボランティア活動って、それによって助かる人や喜んでくれる人が必ずいます。だからこそ、「何のためにやるのか?」「誰のためにやるのか?」ということは再認識していただくようにしています。
この意識が希薄だと、「ボランティアなんだから、自分の好きなようにやればいい」といった考えになってしまうこともあります。でも、それってちょっと違うじゃないですか。自分の動きは選手のためになるのか?観客のためになるのか?主催者のためになるのか?ということは、常に心に留めて動いていただきたいですね。
――最後にメッセージをお願いします。
<藤綱さん>
先ほど、榊原さんがおっしゃったとおり、大規模スポーツイベントが続くこれからの数年は、スポーツボランティアを知ってもらうよい機会ではあります。でも、大切なのはその後だと思っています。一過性のもので終わらせるのではなく、その後もさらにスポーツボランティア活動を普及・醸成させ、発展させていければと思います。イベントボランティアだけでなく、日常的にボランティア活動を行う方々が増えることを願っています。
子どもの行事でも、地域の催しでも、スポーツボランティアができる場所は身近なところにたくさんあります。大規模スポーツイベント以降も、ライフワークの一つとしてスポーツボランティアに取り組んでいただけたら嬉しいですね。
<榊原さん>
これからスポーツボランティアに参加してみようという方には、「一緒に楽しみましょう!」と言いたいです。初めてボランティアに参加した方から聞くことが多いのは、「日頃、接することがない人たちと交流できて楽しかった」という感想です。やはり、普段の生活とは違うフィールドに出ていくので、今まで出会ったことのない人たちに出会えます。仕事も年齢も違う人たちと同じ活動をするスポーツボランティアには新しい発見や喜びがたくさんあり、きっと世界が広がっていくはずです。
受講者の声【スポーツボランティア・ライセンス更新講習】
──スポーツボランティアをはじめたきっかけは何ですか?
普段はマラソンイベントのボランティアに参加することが多いのですが、私はずっとランナーとしてマラソンに出ていました。ある大会でボロボロになってフィニッシュしたとき、筋肉痛と疲労でシューズに付けていた計測チップを自力で取れなかったのですが、それをボランティアの方が取ってくれたんです。
自分の父親よりも年上じゃないかっていうくらい年配の方が、「がんばったね!」って、わざわざひざまずいてチップを取ってくれたのがすごくありがたくて・・・。その経験がきっかけで、私もスポーツボランティアをするようになりました。今では、自分で走るよりボランティアをするほうが楽しいですね(笑)
──JSVNのライセンスを取得しようと思ったのはなぜですか?
長年、スポーツボランティアをやってきて、現場ではリーダーとして活動することが多いので、何かリーダーの印になるものがあったらいいなと思って取得しました。
──スポーツボランティアのやりがいを教えてください。
いろんなマラソン大会のボランティアに参加して、回を重ねていくと、顔なじみのボランティアさんができたり、ランナーさんとも顔なじみになったりします。そうやって、だんだんと友だちの輪が広がっていくのがやりがいですね。もともとは何の接点もなかった人たちとスポーツボランティアを通して仲良くなれるのは、素敵なことだなって思います。
──スポーツボランティアをはじめたきっかけは何ですか?
2007年の東京マラソンが最初でした。新聞でボランティア募集を見つけたのがきっかけです。実は、私は足に人工関節を入れており、2007年当時は足を引きずっていました。そんな状態でしたが、東京マラソンのボランティアをやってみたら、そこには様々なハンデを抱えながら頑張っている方がたくさん・・・。「俺にもできることがある!」って思って、それ以来、ずっとスポーツボランティアを続けています。
──スポーツボランティアのやりがいを教えてください。
楽しいのがいちばんですね(笑)。昔はまともに動けなかった私が、ボランティアをして動いている人から勇気をもらい、今はこうして動けるようになりました。ボランティアって「お互いにエネルギーを交換できる活動」でもあると思っています。あとは、終わったときの「やったー!」っていう達成感もいいですよね。
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