キッズドアが運営する子どもの第三の居場所「ラーニングラボすみだ」にいってきました。

キッズドアとは?

  • 認定NPO法人キッズドア

キッズドアは、子どもの学びを支援して、すべての子どもが夢や希望を持てる社会を目指して活動している認定NPO法人です。「ラーニングラボすみだ」は、日本財団、墨田区、キッズドアの三者協定によって生まれた「子どもの第三の居場所」。様々な体験・交流を通して、子どもの自立を支援することを目的にした施設です。今回はぼくサニエルが、キッズドアの泉さんと中本さんに、ラーニングラボすみだの取り組みについてお話を伺ってきました。

様々な体験・交流を通して、子どもたちの自立を支援する。

ラーニングラボすみだの運営に携わるキッズドアの泉さん(写真右)と中本さん(写真左)

――「ラーニングラボすみだ」の目的・趣旨を教えてください。

泉さん:

ラーニングラボすみだは、家でも学校でもない「子どもの第三の居場所」として墨田区に立ち上げられた施設です。日本財団さんと墨田区さん、キッズドアの三者協定に基づいて今年(2024年)の4月にオープンした施設で、私たちキッズドアが運営を担っています。

ラーニングラボすみだが目指しているのは、様々な体験・交流を通して、子どもたちの自立をお手伝いすることです。そのための「居場所」の選択肢の一つとして機能させたいという思いがあります。

――ここに来る子どもたちは、どのように過ごしているのでしょうか?

泉さん:

ラーニングラボすみだは、水曜・金曜・土曜の週3日、14時~20時まで開所しています。オープン以降、小学生をメインに受け入れてきましたが、現在は中学生・高校生も利用できるようになっています。登録者は全部で65名ほどですが、1日の利用者は平均すると20名前後です。特に利用条件などは設けておらず、ここに来られる近所の子であれば、誰でも無料で利用することができます。

ラーニングラボすみだのコンセプトの一つが、「時間割のない場所」です。「今日は最初に宿題をやって、それから工作をしよう」というように、子どもたちが自分で考えて、活動の見通しを立てられるようになるのが一つの目指したい姿です。

ただ、まだオープンしたばかりで、また小学生の利用が多いということもあり、大まかなタイムスケジュールは設けています。今は、14~15時が学びの時間、15時過ぎにおやつを食べて、その後、17時までが自由活動という形で運営しています。ですが、将来的にはこうした区切りはなくしていきたいと思っています。

――子どもの居場所と言うと学童保育をイメージしますが、学童との違いはどのようなところですか?

泉さん:

学童クラブは、基本的に親御さんが働いていて家にいない子どもを対象としており、親御さんが帰ってくるまで、安全に子どもを預かることを主な目的としています。大勢の子どもたちを安全に管理するためには細かなルールが必要で、その日の活動内容も明確に決められています。学童の特性上、仕方のないことではありますが、必ずしも子どもたちがやりたいことをできるわけではありません。

そのため、ラーニングラボすみだの立ち上げにあたっては、できるだけ子どもたちがやりたいことを自由にできる場所にしたいという思いがありました。スタッフのほうから「今日は絵を描こう」というようにプログラムを提示するのではなく、子どもたちのほうから「今日は○○がしたい」と言い出せるような接し方や雰囲気づくりを心がけています。

大人が決めたことをやるのではなく、自分たちのやりたいことをできる場所

2階のワークスペース。子どもたちの勉強のほか、イベント用のスペースとしても活用。

――古民家を改修した建物だと伺いましたが、その背景を教えていただけますか。

中本さん:

ここは元々、ある方が表具屋を営んでいた場所です。その方が表具屋を畳むときに、「地域の子どもたちのために活用してほしい」と墨田区に相談されて、私たちが譲り受けることになったという経緯があります。


子どもの居場所として活用するためにリノベーションをしていますが、できるだけ昔の面影を残すようにしました。設計事務所さんの方針でもあるのですが、「昔と今をつなぐ」ことを大切に改修しています。ですから、外観には表具屋の名前も残してありますし、柱や階段、神棚や倉庫など、元々の構造や造作などもできるだけ残してあります。

泉さん:

新築の建物と違い、昔、誰かが暮らしていたことが感じられる温かみが残っています。学習塾のような無機質な空間ではなく、田舎のおじいちゃ んおばあちゃんのお家に来たかのような雰囲気です。それが、子どもたちの居心地の良さにつながっているようにも思います。

中本さん:

子どもたちはみんな、畳の部屋が大好きです。オープン初日に「ここに泊まりたい」と言う子もいたほどです。何も置いていないので、オープン前は「退屈してしまうかもしれないな」と思っていたのですが、そんな心配は無用でした。みんな、ごろごろ寝転がったり、はしゃいだりして楽しんでいますね。

――またオープンから2ヶ月ですが、子どもたちの変化を感じるところはありますか?

中本さん:

オープン当初は、みんな自由時間に本を読んだり絵を描いたりしていたのですが、最近は、工作をしたり、部屋の中に迷路やお化け屋敷をつくったりするようになっています。「これくらいの大きさのダンボールがほしい」「画用紙が何枚くらいほしい」というように、子どもたちからのリクエストも増えてきました。ある程度、自分たちのやりたいことを言えるようになってきたのかなという変化は感じています。

泉さん:

最初は、「ここって、何ができるんですか?」という感じで来る子がほとんどでした。それがだんだん、「今日はこれがしたい!」「次はこういうことがしたい!」と言う子が増えてきました。大人が決めたことをやるのではなく、自分たちのやりたいことをやるという主体性が見えはじめているのは、すごく嬉しいことですね。

「地域で地域の子どもたちを育てる」エコシステムをつくっていきたい。

外観は表具屋だった頃の面影をそのまま残し、町の景観に配慮されている。

――今後、力を入れていきたいことを教えてください。

中本さん:

私は、地域のボランティアさんを増やしていきたいと思っています。この場所に施設を立ち上げることになったときは、下町エリアということもあり、もしかしたら「よそ者扱いされてしまうのでは……」という不安もありましたが、みなさんとても温かく受け入れてくださいました。

ただ、ボランティアとして参加するという話になると、ハードルを感じている方が多いようです。オープン前におこなった見学会でも、「ボランティアとしてお手伝いしていただけませんか?」といった声かけをさせていただいたのですが、「やったことがないから」「私にはできそうにない」というように、及び腰になってしまう方がほとんどでした。

私は、将来的には「地域で地域の子どもたちを育てる」エコシステムをつくっていきたいと思っていて、ここをその拠点にしていきたいと考えています。今は、主に私たち職員とアルバイトで運営していますが、ゆくゆくは地元の人たちが自分たちの施設として、自分たちで人もお金も管理しながら運営していく形が理想です。それこそが「地域密着」であり、「サステナビリティ」であるはずなので、そのためにまず、地域のみなさんが気軽にボランティアに参加できるような取り組みをしていきたいと思っています。

泉さん:

私は、地域の方々にもっと私たちの活動を知ってもらいたいと思っています。「子どもを預かってもらえるなら助かる」という親御さんは多くいらっしゃいますが、ここは、ただ子どもを預かる場所ではなく、多様な体験や大人との交流を通して子どもたちの成長を促す場所です。今度、施設の見学会をおこなうのですが、このようなイベントを通して、親御さんをはじめ地域の方々に、ラーニングラボすみだの意義や魅力を積極的に発信していこうと思っています。

また、今後は子どもたちに、より幅広い選択肢を提供していきたいと考えています。できるだけ自由に活動してもらいたいという思いがある一方で、やはり「知らなければできないこと」もたくさんあります。様々な体験・経験を提供することで、活動に広がりを持たせていけたらいいなと思います。

たとえば来月は、カメラを使った実験を計画しているのですが、その他にもプログラミングや自然体験などを考えています。子どもって、何でスイッチが入るか分からないので、常に「こういうのもあるんだよ」という形で、できることの可能性を膨らませてあげたいですね。

――最後にメッセージをお願いします。

子どもたちは、いろんな年代の大人との触れ合いによって、学び、成長していきます。ですから、できるだけ多くのボランティアさんに参加してもらいたいと思っています。子どもの隣で話を聞いてあげたり、宿題を見てあげたり、そんな温かな交流を持ってくださる方が一人でも増えたら嬉しいです。

「あまり子どもと接したことがないから……」と言う方もいますが、たとえば、施設内のお掃除や庭のお手入れ、食事の準備など、どなたでもいろんな関わり方ができる場所です。子どもが好きな方はもちろん、ボランティアや地域参加に少しでも興味のある方は、ぜひお気軽に声をかけていただきたいと思っています。

泉さん:

ゆくゆくは、ラーニングラボすみだのような場所が全国にたくさん増えていったらいいなと思っています。私たちはそのモデルとなれるよう、今後、良い実践例を積み重ねていきたいです。

私たちの活動を広く知ってもらうことで、「地域で地域の子どもを育てる」という動きが全国に広がっていくのが一番の理想です。キッズドアだけでできることには限りがあるので、共感・賛同していただける団体さんや企業さんが全国に増えていったらいいですね。

もう一点、私たちキッズドアには、「貧困による教育格差を解消する」という理念があります。今後は、経済的に困窮しているお子さんにもラーニングラボすみだを利用してもらい、様々な体験・交流を通して自立の支援をしていきたいと考えています。

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