財団とボランティアが両輪となって、神奈川の海岸美化に取り組んでいく
こんにちは、柱本さん。「かながわ海岸美化財団」はどういう団体でしょうか?
こんにちはサニエル!私たちは「かながわ海岸美化財団」という名前のとおり、神奈川県海岸の美化清掃を行っている団体で、平成3 年(1991)年に設立されて26 年目を迎えます。団体の一番の特徴であり、私たちの自慢でもあるのが、たくさんのボランティアさんとの信頼、協力関係です。一般的に、何かのボランティア活動を行いたいとき、行政機関に事前に団体登録したり、事業計画を提出したり、活動後も結果報告書を作成したりと活動に伴う様々な手間がかかったりします。しかし私たちは、あくまでお互いが独立した対等なパートナーとして、ボランティアさんの自主的な活動をサポートするという考えのもと、もっと活動しやすいようにバックアップしています。具体的には無償でごみ袋を提供したり、清掃用具を貸し出したり、ビーチクリーンで集めたごみを私たちが回収したり、ボランティアさんが負担なく活動できるようにしています。
財団が設立される以前も行政による海岸清掃は行われておりましたが、清掃の中身は、県や市町、また、隣り合う市町同士でもバラバラでした。そのため、一体的、効率的な清掃を行う団体の必要性が求められていました。また、ボランティアさんが活動するための拠点も必要とされ、平成3年に県と相模湾沿岸の13市町と民間企業が資金を出し合い、海岸清掃を目的とした日本唯一の公益法人「かながわ海岸美化財団」が設立されました。この設立により、神奈川県の150キロに及ぶ海岸が効率的に清掃されるようになり、また、多くのボランティアさんがより活動しやすくなりました。例えば私たちは、海岸のごみの状況を日々チェックして清掃計画に活かすパトロールを行っているのですが、私たちだけでは対処しきれない場合もあり、ボランティアさんのご協力が必要不可欠です。また美化財団の清掃は、広範囲を短時間で清掃することが求められるので、大型重機を使った清掃が中心になります。そうした清掃と、ボランティアさんの細やかな人の手による清掃はとても良い補完関係にあります。やはり、人の手で小さなごみまで一つ一つ拾った海岸はとても気持ちの良いものです。こうした海岸を維持するには、ボランティアさんの力が必要です。一体的な清掃や海岸パトロールといった公的な機関だからこそできる活動を続け、ボランティアさんと両輪となってかながわの海岸美化に取り組んでいく。これが私たちの一番の特徴です。
地道な活動が信頼関係をつくりだした
運営で一番力をいれていることは何ですか?
やはり、ボランティアさんとの信頼関係づくりですね。職員が誰よりも熱心に海岸を清掃し、地元のお店を訪問したり、イベントを開催したりして「一緒に清掃しませんか」と根気よく呼びかけ続けたんです。そして地道に取り組みを続けた結果、徐々に私たちの想いも伝わり、現在では多くのボランティアさんと信頼関係を築くことができました。しかし現在でも、日々のコミュニケーションは欠かしませんし、もっと信頼していただけるよう清掃活動にも力をいれています。よく家族と海に遊びに行くのですが、その時も地元のボランティアさんがきているんじゃないかと無意識に掃除をしてしまい「パパと海に行ってもつまんない!」と子どもに怒られるほどです(笑) ときにはボランティアさんから厳しいご意見をいただくこともありますが、それもこれまで積み上げてきた信頼関係があるからこその言葉だと思っています。
地道に絆をつくり上げ、ボランティアさんの数は16 万人に
最近では県内だけではなく、私たちの取り組みにご賛同いただいた県外のボランティアさんからも多くのお問い合わせをいただいており、私たちが行う清掃活動にご協力をいただいております。またボランティアさんたちが自主的に行う活動に対しても、当然ながら清掃道具の貸し出しやゴミ回収などのサポートをさせていただくのですが、サポート依頼の煩わしい申請手続きをインターネットや電話で簡素化したことも、ご協力いただけるボランティアさんが増えた理由だと考えています。「手ぶらで参加」「問い合わせは簡単」、このふたつが大きいですね。きれいな海を守りたいという気持ちは全員一緒。同じ海を愛するパートナーだと思っているので、これからもこの対等な関係を変えることはありません。これからも一人ひとりが自由に、楽しく活動できるような支援を続けていきたいですね。
次の課題は“ごみを増やさない”こと。未来につながる新たな取り組み
ほかにこれから、どんな活動を続けていくのですか?
海岸清掃を続けることで、ごみが海岸に放置され続けることは少なくなりましたが、根本的に捨てる側の問題が解決されないと、本当に問題が解決したとはいえません。そこで今後は、捨てられるごみを減らしていきたいですね。いまも「学校キャラバン」といって地元の学校を回って啓発活動を行っています。街のごみが海岸に流れ着くということは大人でもあまり知られていなかったりするので、イラストを使った冊子などを使って、少しでもわかってもらえるよう試行錯誤しています。こうした種まき活動を続けて、いつか実になり、そして花開けばと考えています。
そしてもっとたくさんの人に神奈川の海に遊びにきてもらえるようにしたいですね。